“Monkey Magic” その5

12019 / Pixabay

“Monkey Magic”シリーズ。
“Monkey Magic” その1
“Monkey Magic” その2
“Monkey Magic” その3
“Monkey Magic” その4

前回と前々回で、♪Monkey Magic♪の繰り返しから、“Monkey Magic”が子どもにウケる理由と、“Monkey Magic”童謡化計画を妄想してみたわけだけれども、今回は歌い出しの部分にフォーカスし、しつこく“Monkey Magic”をテーマに妄想を深めてみたい。

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第一回評 三紙読み比べ

“Monkey Magic”は様々な要素の相乗効果によってヒットしたのだと思う。もちろん『西遊記』のドラマ自体が面白かったというのが第一条件だったのは間違いないだろう。しかし第一回放送日(1978年10月1日)の朝刊で『朝日新聞』は「中国の歴史や風土の底の深さを感じさせるところまでは、やはり力及ばず…。中途半端に子ども向けなのも気になる」とやや辛辣な部分がある批評を掲載している(p.13)。その一方、『毎日新聞』は「家族で楽しめる冒険ロマン」と高評価である(p.24)。

このように第一回の作品自体については賛否両論だったが、特撮技術については『朝日』、『読売』、『毎日』三紙こぞって評価している。

2013年現在のCG技術から見れば1978年放送の『西遊記』の特撮は稚拙にも見えるが、当時としては画期的だったのだろう。たとえば前述した辛口批評の『朝日新聞』でさえ「アニメーションとの合成画面、特撮など随所に日本のテレビ技術の見せ場もある」(出典同上)と書いている。

また『読売新聞』は「特撮に様々な工夫が凝らされて楽しい」とし、オープニングの孫悟空の誕生シーンを「痛快」と評している(1978年10月1日、p.24)。

確かに物語のプロローグをイメージするオープニングは幻想的かつ不気味で、『西遊記』の特撮技術を象徴すると言っても良いだろう。このオープニングシーンのおどろおどろしさをバックアップする音楽については、上掲三紙ともに一言も、一切、ぜん~ぜん、ゴダイゴの「ゴ」の字も、(のちに大ヒットする“Monkey Magic”と“Gandhara”についてさえ)触れていないが、言うまでもなくゴダイゴの“The Birth of the Odyssey”なのだ(自慢)。

オープニングから“Monkey Magic”へ

ということで、『西遊記』のオープニングから“Monkey Magic”への流れを見てみよう。

“The Birth of the Odyssey”をバックに、何かの意図を秘めているかのように天地に分れて蠢く雲海―。そこに芥川隆行さんのナレーション。

「昔々、この世に人間が現れる遙か前、
世界は天も地も一つになり どろどろと溶岩のように漂い流れておりました……」(参考:『オープニングナレーション辞典』『西遊記』、閲覧日2013/03/25)

 

花果山の頂の仙石からボコリと石の卵が生まれる。

Andy_Bay / Pixabay

その石の卵は引力に逆らいながらゴロゴロと遡り、さらなる高所へ至って静止する。それは雨雪に晒されながら誕生の時を待つ。

と、突然、空に雷鳴が轟き、稲妻が光る。

吹きすさぶ嵐。稲光が石の卵を直撃する。その刹那、石の卵は破砕し、産声とも雄叫びともつかない低い声を発しながら孫悟空が生まれ出でる。

中国風ジングル。Steveの「アチャーーーーッ!!!」。

短いイントロ

タケ&Steveのツイン・ボーカル

♪Born from an egg on a mountain top♪

もう、もう、これはスゴイ、スゴイ! スゴイすぎる! 本当に素晴しい!!
o_ _)ノ彡☆ばんばん!!

破裂音!

孫悟空が石からバーンって生まれる視覚的イメージと、“Monkey Magic”歌い出しの音楽的インパクトと、♪Born♪の[b]から始まるフレーズの語感が密に絡み合い、絶妙な効果をもたらしている。ここ、本当にすごいな、ミッキー!

と感動していたら、なんとタケデモの時点で、こらへんのメロディは同じ。だからタケが、いやタケもスゴイんだな。もちろん、歌詞の冒頭に“born”という破裂音[b]から始まる単語を置いた奈良橋氏もスゴイ。なんてったって[b]という音素には瞬発力がある(と思う)。そういや“bang”とか“boom”、“bomb"、“breakthrough”(←思いついた順)も[b]から始まってる。端的に言えば[b]という音って、突然、ドッカーン!って感じ。歌詞、曲、アレンジがキッチリ噛み合っている。

この歌い出しに、『西遊記』第一回の「石猿 誕生す」というタイトルが表わす物語全体の背景とか、当時のゴダイゴのヒットを出さなきゃヤバイとか、BBCでの放送が決定している(=ゴダイゴ世界進出の足がかりになる)とか、そういうドラマ内外の様々な思惑と意気込みが集約され、まるでインク・ジェットのように噴出する。

凝縮された要素

“Monkey Magic”の歌い出しには、作曲からゴダイゴでの録音までの状況が反映されているような気もする。タケが歌詞を受け取って作曲し、コーラスつきで自宅録音してゴダイゴが待つスタジオへ持って行き、アレンジへ向かう過程は、絶賛発売中のタケの本に書いてあるので(p.68-)当ブログでは割愛する。

“Monkey Magic”の歌い出しには、筆者の妄想が及びもしない音楽的センスとエッセンスが凝縮されているのかもしれない。

「“Monkey Magic” その6(最終回)」に続く。

ゴダイゴ
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