続きモノです。
この忙しいのに……。/(--;)ウーム...
すごーくお時間がある方は↓からどうぞ。
宮川泰氏とゴダイゴ-その1-
宮川泰氏は、かつて『朝日新聞』で「サウンド解剖学」という音楽をテーマにしたコラムを連載していた。
連載期間は1979年5月18日から1981年5月27日の2年間、全100回である。
今回はその「サウンド解剖学」から宮川氏がどのようにゴダイゴを見ていたのかを探ってみよう。
「サウンド解剖学」
「サウンド解剖学」は、毎回ヒット曲を数曲取り上げ、部分的ではあるけれど譜面を示しながら具体的に宮川氏の分析が語られる。テレビで見るダジャレ好きで陽気な音楽家という先入観で気楽に読み始めると、時に歯に衣着せぬ言葉が並び、そのギャップに驚くこともある。
ゴダイゴは第24回でチューリップとともに初めて取り上げられた。しかし実は、本格的にゴダイゴに焦点があたる前に、第16回の布施明氏の回でミッキーの名前が登場する。
布施氏が2度目の低迷期であったところ、「ミッキー吉野のおかげで、布施君は薔薇よりも美しく再び栄光の座に返り咲」く、と宮川氏は述べる。そして「君は薔薇より美しい」は「コマソンだから当たったんで、決してリズムものをうまくこなしたからではない」と辛辣である。その一方で、「皆が君(布施氏)に歌ってほしいと願っているものを、君はうたってくれない」と嘆く。(1979年8月31日朝刊、p.31)
少しゴダイゴから話が逸れるが、布施氏の「君は薔薇より美しい」について。
以前当ブログでも書いたことがあるが、筆者はこの曲は布施氏にぴったりの曲だし、彼以上に歌える歌手はいないと確信する。けれども布施氏のデビューから彼の歌を聴いていた宮川氏にとっては、「君は薔薇より美しい」を歌う布施氏が、もどかしかったのもしれない。
1979年のディスコグラフィ
さて、ここからがやっと本題のゴダイゴの話-。
ゴダイゴが「サウンド解剖学」に取り上げられたのは1979年10月26日である(朝刊、p.31)。この回のトピックは、前述のようにゴダイゴとチューリップの二組のバンドである。しかし割かれた行数は明らかにゴダイゴの方が多い。この差に宮川氏がいかにゴダイゴに注目していたのかが窺われる。
「サウンド解剖学」でゴダイゴが扱われた1979年のディスコグラフィを確認しておこう。
前年の“Gandhara”(1978.10.1発売)、“Monkey Magic”(1978.12.25発売)で大ブレイクを果たしたゴダイゴは、翌1979年も怒濤のようにシングル、LPを次々と発表する。
以下、1979年のゴダイゴ関連のレコード発売日を時系列で列挙する。
5月 1日 タケソロ・シングル「ハピネス」
6月 1日 シングル「はるかな旅へ」
6月25日 アルバムOUR DECADE
7月 1日 シングル「銀河鉄道999」
10月 1日 シングル「ホーリー&ブライト」
10月25日 ライヴ・アルバム『マジック・カプセル』
(参考 Nayutawave Records Discography 閲覧日2012/05/13)
この後も、『マジック・カプセル』映画公開(1979.10.27)、武道館単独ライブ(1979.12.19)、紅白歌合戦出場(1979.12.31)と、ゴダイゴの快進撃は続く。
宮川氏がゴダイゴを扱った「サウンド解剖学第24回」は、1979年10月26日の朝刊掲載なので、偶然かもしれないが、タイミング良く1979年のレコードが出揃ったところだった。しかしながら、宮川氏いわく、アルバムは特定のファンが買うもので、シングルの方が一般的だから「サウンド解剖学」ではシングルをトピックにするのだという(『朝日新聞』夕刊、1981.5.20. p.9)。よってゴダイゴを扱った第24回でも、同年に発表されたOUR DECADEやMAGIC CAPSULEについては一切触れられていない。
「ビューティフル・ネーム」
宮川氏はコラムで「ビューティフル・ネーム」を次のように評価する。
『ビューティフル・ネーム』(……)を初めて聴いた時は、驚いた。デキシー・スタイルのイントロから(歌へ入る直前の2/4拍子の唐突さは、今でも気になるが)、いきなり転調して歌が飛び出した瞬間、“やった”と、他人事ながら快哉(かいさい)を叫んだ。
冒頭(引用者=tiara_remix注:♪今日もこどもたちは……♪あたり)の単純明快さ。途中の「名前 それは燃える 生命(いのち)」のメロディーの温かさを支えるコード進行。そして、全体を通じてドラムとベースは、昨今流行の細かく刻んだリズムに背を向け、音の数を省いて快適なテンポと情感を醸し出した見事さ、後半でのキーボード類のきらびやかなサウンド……。これほど緻密(ちみつ)に計算され、しかも<子供たちのための大人の歌>を作り上げた作者の才能は、驚異的でもあった。(山括弧強調部は原文では傍点強調)(「サウンド解剖学 24」『朝日新聞』朝刊、1979年10月26日p.31)
さらに「銀河鉄道999」に話題が移ると、サビの部分は「英語でうたわれるとまったくアチラ風、日本人らしからぬ作風であり、日本の水準もここまで上がったかと感心する」。
と、ここまでは大絶賛である。
コメント