これが“Guilty”だ!!! その3

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これが“Guilty”だ!!! その3

“Guilty”シリーズは、ゆる~く繋がっています。
すごーくお時間のある方は↓からどうぞ。

 

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歌詞の変更理由

前回は『Walk On』に掲載された記事から“Guilty”のバックグラウンドに焦点を当てた。今回は“Guilty”の歌詞の変化について、公式版とオリジナル版をピンポイントで具体的に比較しよう。

歌詞の変更理由は様々あるだろう。

ここでは便宜上“Guilty”の歌詞変更理由を、1.韻/音、2.音節、3.内容、の3つに分類し、筆者の推測、いや、推理を述べる。いや、半ば妄想だ。しかし、Godiegoを聴きながら妄想とかを語るのが、当ブログのコンセプトなので、あしからず。

 

1.韻/音

一番分かりやすいところは1コーラス目のサビ(以下「1サビ」と略記)。
公式版(=リミックス版)では以下のとおり。

♪You make me feel so guilty
For wanting to be closed to you
But you made me go dizzy
The very first time I saw you♪

1、3行目の“guilty”と”dizzy”、2、4行目の”you”がきれいに韻を踏んでいる。

ではオリジナル版を見てみよう。(以下、オリジナル版歌詞は『Walk On 37号』による)

♪Don’t make me feel so guilty
For wanting to love only you
You never answer
So that’s the only thing I can do♪

2、4行目の“you”と”do”は韻を踏んでいるが、1、3行目の”guilty”と”answer”は韻を踏んでいない。

ここは、メロディが対になっている。だから歌詞も対にするために”guilty”と韻を踏む”dizzy”に合わせて、歌詞を作ったのだと思う。

加えて、ここで言葉の「音」を優先させて歌詞を変えたのかな、と思うのは、公式版1サビの入りで、”don’t ”を外したことだ。並べてみよう。

公式版    ♪You make me feel so…♪
オリジナル版 ♪Don’t make me feel so…♪

“don’t”から”you”に変わってるだけじゃん。

いや、そうだが、それだけじゃない。

なぜ、“don’t”を”you”に置き換えたのか。

“don’t”と”you”、この二つの単語は一見まったく似ていないように見える。
その通り、やっぱり似ていない。
意味も品詞も全然違う。だがそれだけじゃない。

最初の音がかなり違う。”don’t”が破裂する有声子音(/d/ *超ぶっちゃけ濁音)から始まるのに対し、”you”は半母音(/j/。*超ぶっちゃけ濁音じゃない)から始まる。

この事実を踏まえると、/d/という音からの歌い出しを避けたとしか思えない。サビの入りが”don’t”では、語感が強すぎると感じたのかもしれない。

多分、同じケースじゃないかな、と思うのが“Monkey Magic”だ。
♪You’ll see fireworks …♪のフレーズ。

ファンには常識だが、ここ、歌詞カードでは♪There’ll be fireworks …♪になっている。筆者が確認できる限りでは、LP(1978)は元より、『旧BOX』(1991)も、CD文庫(1993)も、『新BOX』(2008;『西遊記』、特典ディスク共に)も、歌詞カードはすべて♪There’ll be…♪である。しかし実際に歌われる歌詞は例外なく♪You’ll see…♪である。(歌詞カードを修正するチャンスはいくらでもあっただろうに……。)

なぜ”there’ll”から”you’ll”に変わったのか。筆者は30年以上、そのことばかり考えて今日まで生きてきた。(←ウソ)

そしてつい最近、“Guilty”を読みながら、ふと”Monkey Magic”も同じ理由じゃないかと思った。つまり、単語の最初の音が摩擦の有声子音(/ð/ *超ぶっちゃけ濁音)から始まる”there”を避け、半母音(/j/)で始まる”you”に変えたのではないかと。

単純に考えれば、"you"の方が"there"より歌いやすい。だが理由はそれだけだろうか。
もちろん"there"は日本人には難しい発音の一つだ。しかし、長年英語で歌うことにこだわり続けてきたタケにとって、"there'll be"が、さほど歌いにくいとは思えない。

もちろん、日本人が歌いやすいように、という理由であるわけがない。そんなんだったら、"Monkey Magic"は、最初から日本語で歌われていたはずだ。

♪山の上で サ・ル・がっ
生まれた、オタンコザル、孫悟空♪ (訳詞:tiara_remix)

したがって、"Monkey Magic"の"there'll"が"you'll"に変わったのは、歌いやすさというよりも、/ð/というザラッとした摩擦音を避けるためではないだろうか。

2.音節

ここも同じく1サビを見てみよう。

オリジナル版の譜割りは、ちょっと間延びしている感じがする。たとえば、以下の二箇所。

(1) 1サビ3行目

公式版   ♪But you ma~de me go di~zzy♪
オリジナル版♪You~ ne~ver a~nswer♪

(2) 1サビ5行目

公式版   ♪If it’s a crime girl (to fall in love)♪
オリジナル版♪Whate~ver (happens between us now)♪

歌ってみると、いかにオリジナル版が間延びした感じがするか分かる。それを調整するために音節(ぶっちゃけ母音+子音)を増やしたのだろう。

同じパターンで、もっと端的に分かりやすいのは“Cherries Were Made for Eating”。シングル版の2コーラス目で、♪With a ri~ng♪と歌われる部分だ。ここはライブでは必ず♪with a ring in♪と、”in”を加えて音節を一つ増やしている。おそらく同じ理由からだ。

前述の"Monkey Magic"の"there'll be"から"you'll see"への変更では、逆に音節が一つ減っている。これは音節調整のための変更とも考えられる。

3. 内容

“Guilty”って、前にも書いたかもしれないが、ゴダイゴには珍しく歌詞が人間の内面に向かっていて、深い感情を歌っている。それに情景描写が美しくて好きだ。

で、筆者が特に好きなのが公式版1コーラス目の以下の部分。

♪I closed my eyes
And asked the pale moon above
What have I done
What sin have I been guilty of♪

めちゃくちゃ美しい……。
青白い月光を浴びながら、「この愛は罪なのか……」と苦悩する青年のシルエットが浮かぶ。

美しいだけではない。
聴いていて“Guilty”の世界観に、スッと入っていける。すなわち容易に共感することができる。

一方、オリジナル版の歌詞を見てみよう。

♪A song of the spirit
Is used in the healing of love.
A picture or letter
Can't do what is done with a song.♪

詩的で美しい。解釈の幅があって、文学的には実に奥深い。

だけど、筆者にはちょっと分かりにくいかな。なぜならスパーンって映像が出て来ないから。つまり共感しにくい。その点、公式版の♪I closed my eyes…♪からのバースは、自分の経験とも同調するし、想像力の及ぶ範囲だ。だから映像が出てくるのだと思う。それが、「分かる/分からない」って事なのかもしれない。だからこの部分の変更は、分かりにくい内容から、より分かりやすい内容を目指して変更されたんじゃないかな。

試行錯誤

またハナシが飛躍するけれど、タケがDEAD ENDというテーマが当時「全くわかんなかった。何言ってんのかもわかんない」(『旧BOX』 p.17)と言ってたのって、こういうことなんじゃないだろうか。つまり自分の経験とも同調しないし、想像力も及ばない。だから映像が出てこない=「わかんない」ってことなのだと思う。

話を“Guilty”に戻そう。

筆者が今回展開した推理、いや妄想の正否はともかくとして、最終的に、“Guilty”オリジナル版のAメロ、Bメロは、大幅に変更され、公式版ではフランス語詞の導入にまで至る。サビだって前述した箇所の他、大なり小なり変更されている。

まぁ、たぶん、ゴダイゴは実際に歌ってみたり、聴いてみたりしながら「こっちの方が、なんかいいよね」なんて、<感覚>でサクッと変えた部分が多いとは思う。

だとしても、約30年前に発表された曲の、今やどうでもいい歌詞変更について、むにゃむにゃ考えるのって、なんだか楽しい。

あ、そうだ!
筆者がかつて受講した「英語音声学」の成績が、燦然と光り輝く「D」であったことは付け加えておかねばなるまい。全出席なのに……orz。

参考文献

松坂ヒロシ『英語音声学入門』研究社1986年
「国際音声記号」Wikipedia 他

やっと次回「これが“Guilty”だ!!! その4」が“Guilty”シリーズの最終回ってことで……。
「まだ続くんかいっ!」というツッコミは、甘んじて受けます。

ゴダイゴ
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