これが“Guilty”だ!!! その4(最終回)

これが“Guilty”だ!!! その4 (最終回)

“Guilty”シリーズは、ゆる~く繋がっています。
すごーくお時間のある方は↓からどうぞ。

やっと“Guilty”の最終回にたどりついた……。長かった……。

前回は、公式版とオリジナル版を比較し、どこが、なぜ変更されたのか、という筆者の推測を述べた。素っ頓狂すぎる妄想かもしれない。だが、前回のように思っちゃったのだから仕方ない。

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劇的効果

さて、オリジナル版、リミックス版、公式版の三曲を聴き比べると、音楽という観点からは、オリジナル版が最も“Guilty”と呼ばれる作品に相応しい。オリジナル版を聴いた後では、あれほど切なく感じた公式版も、なぜかアッサリしているように感じる。

ただ、歌詞を比較すると、前回見たように公式版の方が断然良くなっている。やはり変えただけのことはある。(フランス語詞の件はこの際なかったことに……じゃなくて、こっちに置いといて。)

けれども、公式版では、残念なことにオリジナル版が持つ二つの劇的効果が失われている。これは非常にもったいない。二つの劇的効果とは、「フック」と「禁止の命令文」だ。以下に簡単に述べてみよう。

1.フック

「フック(hook)」とは、一般的にはコートや何か物を引っ掛けるためのカギ状のアレ。だけど英語には「(人を)誘惑する[引きつける]もの」という意味もある(『ジーニアス英和大辞典』電子辞書版)。ぶっちゃけ、観客に「おっ」と言わせる仕掛けのこと。観客が「おっ」と言うとどうなるかというと、それをキッカケにアーティスト/作家が創作した世界観に入り込みやすくなる。慣用句で言えば「つかみはOK」って感じかな。

“Guilty”のフックとは、音楽的構成は別にして、まず歌い出しがTommyだということ。ファンは、基本タケが歌うという先入観を持っている。そこへTommyがリードボーカルをとることで、「おっ」と思う。たとえTommyが歌うことが分かっていても、やっぱりTommyは歌も英語もうまい。表現力もある。だから引き込まれる。

そして1サビでタケへチェンジ。

まぁ、ここでコスメ用語を使うのもどうかと思うが、適切な形容詞が見つからないので敢えて使おう。オリジナル版では、グロッシーに歌うTommyから、マットなタケの声に変わった瞬間に、こっちはまた「おっ……」。これで聴く側は、さらにぐいっと“Guilty”の世界に引き込まれる。

なのに公式版ではタケ一人で歌っている。だから当然、Tommyからタケに変わった瞬間のフックは発生しない。

アルバムFLOWERと同時期に発行された『Walk On 40号』のタケの弁によれば、

「ステージでは僕がボーカルをとってはいない曲もあるわけですが、統一感を出そうと(FLOWERでは)歌は僕が唄うかたちになりました。」(n. pag.)

「統一感」と引き替えに、公式版ではTommy→タケへのフックが消滅。

筆者はタケファンだった。あっ、なぜ過去形で言ってしまったんだろう。もとい。筆者はタケファンである。だが正直に言えば、今のタケより、1970年代後半~1980年代の細かった、いや、少なくとも太っていなかった時代のタケより、ゴダイゴの方がうんと好きだ。だから公式版“Guilty”がTommyとのツイン・ボーカルでないのが残念でならない。

2.禁止の命令文

もう、これは声を大にして言いたい。住宅環境が許すなら叫びたい。

なぜ、なぜ、1サビから”don’t”を外したのか!?

前回はやむを得ず平静を装い、有声子音の/d/が……、とか偉そうな事を言っちゃったりしたが、そんなことはどうでもいい。これに関しては、たとえ理性が納得しても、感情が納得できない。もう一度言おう、

なぜ、1サビから”don’t”を外したのか!?

独善的だと言われてもいい。1サビの入りは、誰が何と言おうと”Don’t make me feel so …”でなければならない。

ちょっと、頼むよ~ゴダイゴ!!
ホント、ここ、”You make me feel so …”とか言っちゃって、そんな冷静でいいの?

つまり、オリジナル版では、♪Don’t make me feel so …♪と、禁止の命令文。
だけど、公式版では、♪You make me feel so …♪と、平叙文。

平叙文とは「物事を主観をまじえず、ありのままに述べる文」(『広辞苑』第6版電子辞書版)のこと。だから客観的で、ある意味、冷静な表現だ。にもかかわらず、あのメロディに乗せることで、平叙文でさえ聴く側の感情を震わす。

音楽って、ステキ。

うっとりしている場合ではなかった。つまり平叙文でさえそうなのに、オリジナル版では禁止の命令文が使われている。だから、さらに切なさがこみあげる。

♪Don’t make me feel so guilty…♪

このフレーズを歌うのが、男性だからっていうこともある。つまり男性が言いそうもない事を、敢えて口にするからなおさら切ない。これもフックの一つかもしれない。

たとえば『ロンバケ』時代のキムタクに、「お前は俺をやましい気持ちにさせる」と平叙文で言われるより、「俺をやましい気持ちにさせんなよ」って、禁止の命令文で言われる方が、胸がズキュンって痛まないだろうか。いや、なにもキムタクじゃなくてもいいけど。

話を戻そう。

結局、本当の経緯は知らないが、公式版では”don’t”は”you”に置き換えられ、ただの平叙文になってしまった。フランス語詞の♪Ne quitte pas...♪と表現が重複するからだろうか。いや、しかし全英語詞版(リミックス版)の時点で、すでに、"don't"は外されているからなぁ……。

いずれにせよ、公式版では、Tommyからタケへチェンジする際に自然発生する「フック」も「禁止の命令文」も失われた。と、同時にオリジナル版にあったドラマ性が減ってしまったのだ。

もったいない……。一言相談してくれればいいのに……。

最強の“Guilty”

“Guilty”は公式版/リミックス版も、オリジナル版も一長一短だ。なんでそれぞれのいい部分を集約しないんだろうと思う。一言相談してくれればいいのに……。

とにかく、最強の“Guilty”は以下のとおり。

オープニングで雷鳴。
ミッキーの神イントロ。

TommyのAメロ、Bメロ。♪Alone in the night...♪

で、タケの1サビはシャープに禁止の命令文から-“Don’t make me feel so guilty…♪

歌詞は、基本的にリミックス版で。もちろん、♪I closed my eyes…♪のバースもイキ。
あ、でも2コーラス目は、オリジナル版の♪Right or wrong♪のコーラスから入ってほしい。♪Perhaps you will hear it♪の語感も好きだ。
う~ん、ここは応相談。

で、間奏はもちろんオリジナル版そのままで。

稲妻、雷鳴、
青白く冷たいライト、浮かび上がるギターソロ

間奏明け、タケは思いっきり切なく-

♪Mmm Give me a chance babe
A chance to make music with you...♪

あ゛ぁぁぁ~っ、こころが……、いたい……。

 

jrperes / Pixabay

繊細かつドラマティック

これが“Guilty”だ!!!

“Guilty”シリーズ、おわり。

ゴダイゴ
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コメント

  1. コメントありがとうございます。レスが遅くなってすみません。
    もうね、最近、ゴダイゴ以外のことで「あ゛ーーーっ!!! /(~_~;)\」なもんで……。
    >こんな古いページに書いても大丈夫ですか?
    大丈夫です! てゆーか、大歓迎です! o(^-^)o
    古い記事を思い出していただけてうれしいです。
    “Guilty”には、部分的にかもしれませんが、原詞(雷)バージョンでも、FLOWER(仏語入り)バージョンでも、15周年BOX(英語だらけ)バージョンでもない、別の歌詞がついている(21世紀)バージョンがあるらしいです。「らしい」というのは、私がそのバージョンを聴いたことがないからです。是非、この耳で聴いて、確かめてみたいです。 
    FLOWER版で、なんでああなったのかすごーーーく興味があります。たぶん歌詞が構築するイメージより、メロディとの親和性の方を重視したからかな、と思っています。しかしこれは永遠に解明できない謎かもしれませんねぇ……。(遠い目)

  2. こんんばんは、tiaraさん。
    こんな古いページに書いても大丈夫ですか?
    GUILTYが頭から離れなくなってしまい(笑)、以前tiaraさんがシリーズ化されていたことを思い出して読み返しました。
    当時も全文読んだと思うのですが、私は旧BOXバージョンもほとんど覚えていなくて、雷鳴のオリジナルは聴いたことないまま読んだため、全然理解しないで読んでいたと思います。
    改めてどちらも聴き返し、雷鳴のもtiaraさんが一部書き出されている歌詞を参考にしたり聴き取れる部分は聴き取りながらあれこれ考えました。
    今は横浜で演奏したのはオリジナルバージョンだったろうと思っています。
    なにしろトミーの激しいテンションのGive me a chance, babe…のリフレインが焼き付いていて、1番AメロBメロの歌詞もオリジナルバージョンっぽかった気がします。
    公式版とオリジナル版はテンションがまるで違いますよね。
    オリジナル版は恋に狂った音楽オタクのストーカーって感じで、公式版は文学青年(?)の悲恋って感じ???ですかね。
    タケにボーカルを移譲するにあたってキャラクターに合わせたのか、FLOWERのコンセプトに合わせたのかは不明ですが、tiaraさんが指摘されているように冷静な雰囲気の曲に変身したのだ・・・と納得しました。
    旧BOX版は、公式版の流れを継いだ冷静で理論的な悲恋の歌のイメージでできていいると思うので、横浜で私が何度も聴いたストーカー的リフレインはつながらないと思います。
    何度も、と言っても限られた時間の演奏でしたからオリジナル版ほどではないですけれどもね。
    そもそもトミーが歌った時点でオリジナル版と考えるのが妥当な気がしました。
    何か所か歌詞を聴きとって家で確認しようと思ったのに、聴いた歌詞はするする頭から抜けて行くし、うちであれこれ聴くうちにますます混乱して、どこで何を聴いたのかさっぱりわからなくなってしまったのが悔しいですが…(^^;
    日比谷でやるといいな。今度は全部の歌詞を頭に入れて行きます!

  3. 考えてみれば「Flower」ほど収録楽曲の変遷が確認できるアルバムも
    ありませんね。
    (1)「Guilty」…歌詞変更、ヴォーカルパート変更
    (2)「Only Silence」…「If You Love Me」から改題、歌詞変更
    (3)「I Can’t Let Go」…ヴォーカル担当変更(吉澤さん→タケカワさん)
    (4)「How Can I Believe in Love」…当初タケカワさんのみの作曲だった
     のが、サビ部分を残してミッキーさんがリライトして共作曲となる
    また、「Miracle」はWill Williams氏の作詞となっておりますが、ひょっと
    したら「旧BOX」Disc10に収録の同曲(ニューヴァージョン)のトミー作詞
    のものが原詞だったのかもしれません(あくまで推測ですが)。
    83年10月2日オンエア「Honda Live in ’83」(FM東京)で(1)~(3)は
    元バージョンにて演奏、さらにトークにてミッキーさんがアルバムについて
    「まだ制作中」と語っていることから、リリースを3カ月後を控えていながら
    同番組オンエア以降に先述の改変がなされたのは想像に難くありません。

  4. ABCDE気持さん
    コメントありがとうございます。
    FLOWERが『旧BOX』ミッキー&タケ対談で「混乱の極地」とされるのは、「度重なる録りなおし」も要因の一つでしょうね。「リズム隊からやりなおしたり、録音が終わってからも創り直しをしたり」があったようです。(吉澤洋治『Walk On 40号』)。「試行錯誤」とも言えるし、観点を変えれば、「迷い」とも取れます。『旧BOX』で、アルバムFLOWERからのリミックスが多い理由はそこにあるのかもしれません。

    私のかすかな記憶では、"Only Silence"も、当時のライブとは歌詞が変わっているようです。
    アルバム版で♪Only sile~nce♪と歌われるフレーズは、確か♪If you love me~♪だったはず。
    このフレーズの変更だけで、"Only Silence"は、内容が丸ごと変更されたことが推察されますね。
    “Guilty”オリジナル版を聴いて、ゴダイゴはやっぱりライブだな~と再認識しました。
    アップ、ありがとうございました。

  5. ゴダイゴの楽曲の制作過程において、詞も改変されていく様子は一連の
    「タケデモ」シリーズでも証明されております。しかしこの「Guilty」に関しては
    放送音源、アルバム製作過程の音源(?、所謂リミックス版の事)、そして
    アルバム収録版と、発表されているだけで3回も詞の変遷が確認できる、
    非常に稀なケースといえます(他に発表後に詞の改変が見られるケースと
    しては、「Magic Capsule」映画版→ライブアルバム版や、「Follow」の
    「Godiego on Silkroad」収録スロー版→スタジオ版などが挙げられます)。
    「Guilty」の詞の変遷した理由について、改めて当時の制作者からの詳細な
    コメンタリーがあればいいのでしょうけど。とはいえ旧BOXのライナーノーツの
    タケ&ミッキー対談で「Flowerは混乱の極地」などとバッサリ斬られてはいる
    のですが(苦笑)。
    個人的には詞はアルバム収録版の方が好き。でも演奏はドライヴ感たっぷりのライブ版の方が好き、ってところです。ああっ、そういえば大学1年の時に
    フランス語文法の単位、落として後々大変なことになったんだったっけ、私!

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