「MORエッセイ」を探して その6-Thank You, Baby編-(+【2013/10/06 追記】)

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「MORエッセイ」を探して その6-Thank You, Baby編-
【注】「『MORエッセイ』を探して」シリーズには、ゴダイゴのメンバー及び音楽に関する記述は一切ありません。

「『MORエッセイ』を探して」って何だったっけ/何さ? という方で、すごーくお時間がある方は、下をクリックしてください。
その1―Prelude編―
その2-Gateway to the Dragon編-
その3-Deep Red編-
その4-Magic Capsule編-
その4′-A Hundred Years from Now編-
その5―Return to Africa編― (9/18)

その5―Return to Africa編― の続き。

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2011/09/17(土)

-2011/09/17(土) 午後-

国会図書館の最寄り駅である永田町から国会図書館まで、普通5、6分もあれば到着する。

これまでそうだった。

なのに、地下鉄の出口を間違えたせいで、閉館時間まであまり余裕がないというのに40分も徘徊してしまった。なぜ今日に限って……??

幸先悪い……。

国会図書館への経路で、本来見えるはずがない国会議事堂の全景を見て、「おお、国会議事堂だ……」と感動する心の余裕もなく、永田町界隈を小走りに右往左往していた。

とにかくこのあたりは歩道に近隣地図がほとんどない。全くないんじゃないだろうか。

これじゃ歩行者にあまりに不親切だ。

もはや軽く遭難。とにかくここはどこ? 国会図書館はどっち?
なぜ時間のないときに限って、こういう生来の方向音痴が発揮されるんだろう……。

「特別警戒中」の警察官に道を聞くのもちょっとコワイ。

9月も中旬だというのに、太陽はまだ盛夏のつもりでいるらしい。

甚だしい誤解だ。

まるで風呂上がりのように汗をかいて、ハァハァ息切れをしながら、到着予定から40分以上もオーバーして、やっと国会図書館にたどり着いた。

こんなはずじゃ……。

今日は土曜日で17:00閉館だから、閉館まで、あと3時間切っている-。

Hans / Pixabay

待つ時間は長くて

「その2-Gateway to the Dragon編-」で書いたように、国会図書館は閲覧申込みから実際に本を手にするまで、結構時間がかかる。

一分一秒も無駄にはできない。

閲覧申込時の選択ミスが時間を無駄にする。
そう思うとPC検索の手が震える。

『FMレコパル 地方版』の「MORエッセイ」が現存したとして、今日中にコピーを受け取るところまでできるのだろうか。

作業効率を上げるため、頭の中で段取りを組み立てていた。

とりあえず、関西版から見よう。もし万が一関西版も被害に遭っていたら、北海道・東北版、中国・四国・九州版の順に見て……。

PC閲覧申込み、待つ、受け取る、目次確認、ページを開く、そこに栞を挟む。
階下に降りてPCでコピーの申込入力+申込書にコピー範囲の記入……。

どれだけ時間が掛かるんだろう……。
頼む、関西版よ、完全な形で姿を現してくれ。

神に祈った。

切り取り行為者(「犯人」と呼びたいくらいだ)は2人もいない、と信じたい。

関西版掲載の「MORエッセイ」は、必ず、そのまま残っているはずだ。

雑誌受取りカウンター前に設置された病院のロビーのような並んだ椅子に腰掛けて、電光掲示板で自分の番号が表示されるのを待つ-。

気が遠くなりそうだ。

朝からブロック型カットパイン3個しか食べていない。お腹空いた……。迷って無駄に歩き回ったのもあって目眩がする。

この待っている間が食べるチャンスだ。

6階の売店で買ったハーフサイズの焼きそばパンを、斜向かいの人が食べているカツカレーを見つめながら大急ぎで食べた。

そして階段を駆け下りて再び電光掲示板の前へ戻る……。

でたーっ!

ない!

自分の番号が表示された途端に、すかさずカウンターで受け取る。

数冊を束ねて一冊に製本された<表紙>を、まず確かめる。

ない……。

ないよ。

前回、あちこちに貼付されてた「事故本」と書かれたステッカーがない。どこにも。
小口に赤い筋も走ってない……!

焦る気持ちを抑えながら、1982年第11号の目次で「タケカワユキヒデのMORエッセイ」の頁数を確認―。

やっぱり、やっぱり掲載されてる!

そうなんだよ、そういうものなんだよ!

そして136ページを開-

「タケカワユキヒデのMORエッセイ その17 鍵の謎」

あった……。

おちゃらけたタケの似顔絵-

ある……。

探していた「MORエッセイ」が、本来あるべき場所に、ある。

結局、足りなかった4冊分すべて、「MORエッセイ」は、無傷で現存していた。

良かった……。

コピー! コピー!

感動の余韻に浸る間もなく、階下のコピー受付へ急ぐ。

コピーの申込みは閉館一時間前の16:00まで。(土曜日の閉館は17:00、平日は19:00)

筆者がコピーの申込書を受付カウンターに提出したのは、閲覧申込選択をやはり間違えて、やり直したのもあって、受付終了2分前の15:58分だった。間に合った……。

……約30分後、コピーを手にした。

これで『タッタ君現わる』未収録の「MORエッセイ」を全部入手したことになる。

……ここにたどり着くまで、遠かった……。

しかし、達成感というよりも、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

こんなに近くにあったのに、見過ごしていたなんて……。

自分が不注意だったばかりに、「MORエッセイ」のコピーを送ってくださった方には、貴重な時間を裂かせてしまった……。

共感してくださった方々には、感情を無用に攪乱させてしまった。

本当に申し訳ない。

関東版の「MORエッセイ」が、ページを開く度に切り取られていて、その度に深紅の紙が繰り返し現れる。

深紅の色を目にするごとに、怒りと悔しさが堆積し、冷静さを失ってしまったのだ。
迂闊だった……。

おわりに

2011年7月末から始まった「MORエッセイ」を探す旅は、これを全回揃えることができた喜びよりも、むしろ自分の迂闊さに呆然としながら終わった。

筆者は、受け取ったばかりの「MORエッセイ」のコピーを読むこともせずに、国会図書館新館一階の片隅にあるソファに身を沈めた。そして天井を見上げながら、ふうっと深いため息をついた。

以上が、筆者が「MORエッセイ」を探して、「MORエッセイ」の全回を入手するまでの顛末である。

『FMレコパル 関西版』を手にして-
『FMレコパル 関西版』を全冊確認したわけではないけれど、調べた限りでは、<関西版>の「MORエッセイ」は無事だった。やはり、切り取り行為者(「犯人」と呼びたいくらいだ)は2人もいないのだ。

だから全回現存している可能性は高い。

万一、関西版に瑕疵があっても、北海道版・東北版、中国・四国・九州版がある。

おそらく、いずれかの版で「MORエッセイ」を全部読むことができるだろう。

国会図書館は18歳以上なら誰でも入れる。

手続きが煩雑で時間がかかるけれど、それさえ乗り越えれば、国会図書館で『タッタ君現わる』未収録の「MORエッセイ」を読むことは可能だ。

国会図書館で『FMレコパル』の「MORエッセイ」を読もうと思われる方には、関東版を避け、関西版などの地方版でお読みになることを強くおすすめする。

そうすれば、「MORエッセイ」のページを開く度に現れるあの深紅の色に、不快な思いをせずに済む。

けれども、これはあくまでも読者感情の防衛策にしか過ぎない。

何の解決にもならない。

もう解決できる事でもない。

何者かが『FMレコパル 関東版』から、44回分の「MORエッセイ」を切り取った。

これは厳然たる事実である。

謝辞

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

そして、共感してくださった方々に心から感謝申し上げます。
最後にBluebellさんのお力添えとお心遣いへの感謝は、とても言葉で言い尽くせません。
本当にありがとうございました。
ゴダイゴファン、サイコー!
あ、もちろん、ゴダイゴもね!!

3dman_eu / Pixabay

なんとタケ事務所で出版

【2013/10/06 追記】

この経緯を関係者が読んだかどうか知らないが、「MORエッセイ」は『FMレコパル』連載分すべてを収録し、本文への若干の加筆修正と、各回に「作者の30年後の一言」を添え、『タッタ君ふたたび(上)(中)(下)』として2013/9/22発売。各1000円。

コメント

  1. カツミさんへ
    ありがとうございます。
    カツミさんにも、ご心配をお掛けしました。
    是非是非、お時間を見つけて、国会図書館へ足をお運びください。
    「MORエッセイ」、見つかります!!

  2. うわー!ひたむきな執念(って;;;)で達成されましたねっ。
    読んでて、なんだかドキドキしましたよ^^;
    そして、その、ひたむきさが、私にも朗報を。
    機会をみつけたら、ぜひ国会図書館へ行きたいと。
    ありがとうって言いたいような気持ちです。

  3. Re: どこかで見た!
    Bluebellさん
    情報、ありがとうございます。
    マルクーゼは知りませんでした。(ベンサムも「知ってる」ってほど知りませんが……)
    “one dimension”の「一次元」って幾何学的に言えば「線」なので、「一直線男」って感じなのかな、って今日まで思ってました。(笑)
    Wikipediaでざっくり読んだだけですが、マルクーゼの用語なのですね。
      ↓
    Marcuse, Herbert. [斜体]One-Dimensional Man : Studies in the Ideology of Advanced Industrial Societ[/斜体]y. Boston: Beacon, 1964.(『一次元的人間-先進産業社会におけるイデオロギーの研究』生松敬三・三沢謙一訳、河出書房新社、1974年)
    英語版ならタダで読めます。↓
    http://www.marcuse.org/herbert/pubs/64onedim/odmcontents.html
    ライナーノーツの参考文献リスト(reference material)に載ってないんで、気付かなかったかもしれません。
    ありがとうございました。
    一生、「一直線男」と誤解したままでいるところでした。(笑)
    タケは、「当時、DEAD ENDのコンセプトが分からなかった」と、よく言ってますが、ONE DIMENSION MANのコンセプトは理解していたのでしょうか。
    私には、よほど、こちらの方が分かりにくいです。

  4. 最近、学生向けの本で「西洋近代思想」の概要を読んでいたら、昔、ゴダイゴのアルバムの中に出て来た変わった言葉が、そのまんま出て来たのです(驚)!
    快楽計算:快楽は数量に換算して計算できる → ベンサム
    一元的人間:画一的な管理に慣れきって批判的精神を失った現代人 → マルクーゼ
    ジョニー野村さんが考え出した訳の分からない例え話かと思っていたら、哲学者たちが主張した内容だったのですね!
    今更ながら、当時のゴダイゴのアルバムのコンセプトって凄かったんだぁ!と思いました。

  5. Bluebellさん
    コメントありがとうございます。
    ONE DIMENSION MANは、面白いですね。
    ゴダイゴの作品が深くなったように思います。
    内心、ゴダイゴの「理性の時代」と分類しています。
    いずれじっくり読む/聴くつもりですが、それにはかなり時間が掛かりそうです。
    私はOUR DECADEの『タケデモ』が待ち遠しいです。
    あ、ゴダイゴの次のアルバムの方が待ち遠しいかな。

  6. ゴダイゴについて、どういう観点から何を育むかは、人によっても、時期によっても、異なって来るのでしょうが…。
    タケカワユキヒデさんと全く同じ日に大学を卒業した私は、若い頃、研修期間に論文を読んだり学会で発表したりする仕事もしていたので、インターミッションの前から、将来の誰かの研究の対象としてもゴダイゴを観て来ました。
    最近の私は、ゴダイゴの楽曲の成立過程を知る貴重な資料として、ディスク・ユニオン社より発売中のタケカワユキヒデさんの「ホーム・レコーディング・デモ・シリーズ」の続きに大きな関心を持っています。
    ヒット曲よりも、難解なアルバム「ワン・ディメンジョン・マン」の方が、私にはインタレスティングなので、初期の形が、気になって気になって、仕方がありません(笑)。

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