「“Guilty”解読のためのフラ語講座」は、前回「“Guilty”が好きだ!!」と、ゆる~くつながっています。
筆者が初めて“Guilty”を聴いたとき、フランス語なんかまったく分からない状態だった。知っている単語といえば、「クロワッサン」と「ガトーショコラ」と「シトワイヤン」程度。一人称の「私は」すら知らなかった、ということは前回書いた。
今回は、そんな筆者が、学校でフランス語を学んだ後に解読した“Guilty”フランス語パートの文法構造を、備忘録を兼ねて記録しておきたい。
Grammaire
フランス語の文法は、果てしなく複雑だ。加えて筆者がフランス語を学んでからだいぶ時間が経つ。あれほど散々苦労して覚えた活用も、ほとんど記憶が消失している。よって、“Guilty”で使われていない文法については省略する。また、フランス語は、語順(主語+動詞+目的語などの順番)が英語に似ている。フラ語理解の手助けのため、適宜英語を併記する。
フランス語に堪能な方や、すでに“Guilty”フランス語パートを理解されているは、既知の情報だと思うのでスルーをお勧めします。
例文1
禁止の命令文
1. 例文:Ne quitte pas/ Ne joue pas …
*禁止の命令文(「~するな」)
フランス語では、基本的に「否定文」(「~しない」)を作るとき、<主語+ne 動詞 pas>の形になる。(「全然~ない」などの他の形もあるが、ここでは省略)
そして「禁止の命令文」(「~するな」)を作るときは、<ne 動詞 pas>を文頭に持ってくる。
例文をもう一度見てみよう。
Ne quitte pas
Ne joue pas...
禁止の命令文(「~するな」)のパターンだ。
よって、"Guilty”の一行目、二行目の文頭は、動詞(quitter, jouer)の意味が分かれば、何を「するな」と言っているのか分かる。
単語の意味は下記参照。
【単語】
quitter =leave (1.<場所を>離れる、去る。 2.<人と>別れる:<人のもとを>去る。)
jouer = play (遊ぶ)
(注) 動詞がquitter→quitte、 jouer→joueになっているのは、<活用形>だから(一人称直説法現在形)。
英語は時制によって過去、過去分詞に活用する。
しかし、フランス語は時制に加えて、主語(私、あなた、彼/彼女等)によっても活用する。とにかくやたら活用するのが難しい要因の一つ。
その昔、「フラ語は活用がお好き」(1953)という映画が作られたくらいだ。←ウソ。
活用の中でも、不規則に変化する動詞もある。だが幸いなことに、“Guilty”は規則的に変化する動詞しか使われていない。助かった~。/(--;)
だから“Guilty”に限って言えば、下二桁…じゃないや、語尾だけがちょびっと変化しているなら動詞の<活用形>だと判断してよい。
フランス語動詞活用を体感したい方は「Conju フランス語動詞活用表検索サービス」でどうぞ。
avec =with (第一義は「…と一緒に」だが、ここでは第二義の「…を(道具に)使って、…で」)
mon cœur= my heart (私の心臓) *歌詞カードでは"coeur"になっているが、"cœur"が正しい綴り。"œ"が表示できなかったからだと思う。
(注)フランス語は、所有形容詞(my、私の)が男性名詞/女性名詞によって異なる。
ここでは、cœur(=heart)が男性名詞なので、所有形容詞はmon。例:ドリップコーヒーの「モンカフェ(MON CAFÉ)」のパターン。"café"が男性名詞なので、所有形容詞は"mon"になる。
(”ma solitude”欄も参照)
直訳すれば、「行かないで/僕の心臓をもてあそばないで」
例文2
複合過去
2.例文:Pour avoir si souvent dormi avec ma solitude
*複合過去 avoir (助動詞)+ p.p.(過去分詞)
とにかく<過去>のこと。「~した」と訳す。
(複合過去の助動詞にはavoirの他にêtreも使われるが、そんなの“Guilty”には不要だ)
【単語】
pour=for (この場合、「理由」を示す前置詞)
avoir dormi = slept (眠った)"dormi"は"dormir"="sleep(眠る)"の過去分詞)
*(pour + 不定詞複合形(複合過去)=理由を表わす)
si =so (とても、非常に)
souvent=often (しばしば)
avec = with (ここでは第一義の「…と一緒に」が文意と合う)
ma solitude = my solitude (私の孤独)
*solitudeが女性名詞なので、所有形容詞(my)が、maになっている。例:資生堂シャンプーの「マシェリ」("MA CHÉRIE"="my daring(女)")の「マ」(ma)と同じ。
直訳すれば、「僕の孤独と共に、とても頻繁に眠ったこと(が理由)で」
つまり、どういうこと?
えーっと……、
孤独を愛する男がいる。孤独に耐えられない女がいる。遂に女は別れを切り出す。
背を向けた女に、男は告げる。
「行くな……」
こんな感じ?
いやぁ、語感、というか♪Ne quitte pas...♪のメロディが「(お願いだから)行かないで……」って、すがりつく感じだよなぁ……。
いずれにせよ、内容的に英詞パートとイメージが合わない気がする。
それはさておき、次行こう、次!
例文3
母音衝突回避
3.例文 J’entends au loin de la musique
*エリジオン/エリジョン(élision; 母音衝突回避)
フランス語は「母音衝突」(母音が二つ並ぶこと)を嫌う。だから母音が二つ続く場合、一つ母音を省略してアポストロフィ(’)を置く。それがエリジオン。
(誤)Je entends→ (正)J’entends
【単語】
Je = I (私は;一人称単数主格)
entendre de …=hear ...(…が聞こえる)
* entendre→entendsになっているのは<活用形>だから。
au loin = 遠くに、遠くで
la musique = the music (musiqueは女性名詞なので、定冠詞はla)
例文4
関係代名詞
4. 例文:Qui enchante la nuit noir
*関係代名詞
前の行の”la musique”を、"qui..."以降で修飾して、<どんな音楽なのか>を表わしている。
【単語】
qui=which, that (関係代名詞。まぁ、ぶっちゃけ接着剤みたいなもの)
*quiは、疑問詞としても使われる。しかし“Guilty”には不必要なので省略。
このquiはとにかく、<関係代名詞>なのだ。
enchanter=…を魅了する。魅惑する。enchanter→enchanteになっているのは、活用形だから(三人称直説法現在形)。
la = the (nuitが女性名詞なので、定冠詞はla。男性名詞の直前はle。"le lit"参照。)
nuit=night (名詞)
noir=暗い(形容詞)
(1) enchanterの目的語がla nuit noir。→「暗い夜を魅了する」
(2)フランス語は、名詞の後ろに形容詞がくることが多い。la nuit noirで「暗い夜」。例:モンブラン(mont-blanc)が同じ構造。mont=mountain(山), blanc=white(白い)→「白い山」。
整理しておこう。
“J’entends…”から直訳すれば、「僕には、暗い夜を魅了する音楽が遠くで聞こえる」
例文5
~するとき
5.例文:Toujours sur le lit
Quand je pense à notre amour
ここは、単語をそのまま英語に置き換えるだけで分かる。
良かった~(涙)。
【単語】
Toujours=always (いつも)
sur le lit=on the bed (ベッドの上で) *litが男性名詞なので、定冠詞はle
quand=when (接続詞:~するとき)
je pense à…=I think of … (僕は~のことを考える) *動詞の原形はpanser。一人称直説法現在形
notre amour = our love (我々の愛)
直訳すれば、「いつもベッドの上で、僕が我々の愛のことを考えるとき(夜を魅了する音楽が遠くで聞こえる)」
限界……orz
あ~~っ、フラ語でフラフラ。
……ダジャレはスルーでお願いします。
筆者フラ語は落ちこぼれ故、以上で限界。
フランス語に詳しい方、間違いがあったら是非、是非ご指摘ください。
あっ、念のために……
mon cœur= my heart (私の心臓)は、もちろん「私の心」という意味で取るのが正しい。
“Guilty”のフランス語バージョンは、ゴダイゴはもう歌わないかもしれないと思いつつも、「公式版」として最大限に理解したいんだ。
ゴダイゴ、愛しているので。
参考文献
山本安見 “Guilty” 対訳
『プチ・ロワイヤル仏和辞典』電子版
Wikipedia 「フランス語の文法」
Amazonプライム(Prime Music)でゴダイゴ聴き放題!
なんとなく、次回「これが“Guilty”だ!!! その1」へ続く気配が……。
コメント