『タケカワユキヒデ/ホームレコーディング・デモ ARCHIVE SERIES VOL. 5』
DEAD ENDのデモ
今日のテーマは『タケデモ05』。
一番楽しみにしていたデモ集である。なぜならWhat Did You Do for TomorrowやMirageなどの他に、アルバムDEAD ENDに収録されている曲が入っているから。
これはとても楽しかった。
『タケデモ05』に収録されているDEAD ENDの曲は以下の5曲。
Images
The Last Hour
Millions of Years
Under Underground
”Images”
では、まずImagesを比べてみよう。
公式版
公式版はスローテンポ。聴いていると、なんとなくこんな情景が見える。
生命の灯が尽きる直前、彼の脳裏に、「こんなことがあった、あんなことがあった……」と、さまざまなイメージが浮かんでは消え、また浮かんでは消える。
そして思う-。
「ああ、幸せな人生だった……。みんな、本当にありがとう。さようなら、陽の光、さようなら誕生日のケーキ、さようなら僕の初恋。願わくばもう一度……」
そうして彼は、スーッと眠るように息を引き取る-。
公式版はそんな感じ。
『タケデモ05』
一方『タケデモ05』のImagesはすごくテンポが速い。
なんて言ったらいいのかな(←最近気付いたけど、これはタケの口癖だな)、
あ、よく、息を引き取る前に生きている間に経験したことが「走馬燈のように」見える、と言うけれど、その走馬燈が目にも止まらぬ速さでビュンビュンまわっている、グルングルンまわっている、ってそんな感じ。
そして24歳でぷっつり事切れる-。
そういえば、Imagesで年齢の数え上げが「24歳」で終わるのは、タケがこの曲を作ってたのが24歳だったからだろうか……?
DEAD ENDの発売は1977年11月1日(『旧BOX』 p.38)。で、タケの誕生日が1952年10月22日。だから、少なくとも作曲やレコーディングの時点では24歳だったと思う。Dead End (Early Version)の解説でも、タケは自分が「24歳」(n. pag.)だったと書いているから、Imagesの時もそうだったんじゃないかな。
え、だとすれば、「ぷっつり……」なんて、そんな縁起でもないことを言っていいんだろうか。
Imagesの中の彼をタケと同化するのはどうかしてるけど(韻とダジャレかいっ!)、とにかく彼はこれからも生きていくと信じたい。
今現在24歳だから、24歳までの記憶=イメージしかない、ということなのかもしれない。
なんで「事切れる」とか言ってしまったんだろう……。
あ、そうだ、The Last Hourとごちゃごちゃになったんだ。
すいません、Imagesの彼は元気です。生きてます! これからも生きます!
いや、ちょっと待った……。
パニックに巻き込まれた後に、子どもの頃からのイメージが次々と現れて、最終的に「もう痛みすら感じない」って言ってるんだから……、
あー、もうワケ分からん。
こっちがパニックになってどうする!?
Dead End (Early Version)
冷静になって、次にDead End (Early Version)の話をしよう。これを最初に聴いた時の感想は一言、「タケ、これじゃボツだよ」(笑)(-.-)y-゜゜゜
『タケデモ』を聴く醍醐味の一つは、プロデューサー気分を味わえることだ。ま、こっちはすでに30年以上も公式版を数え切れないほど聴いて、聴いて、聴きまくっている。さらにその間、歌って、歌って、歌いまくっている。結果を知ってるから、超後出しジャンケンみたいなもの。だから、かなり強気だ。
Dead End (Early Version)は、はっきり言って、お経みたいだ。サビは違うけど、歌い出しが。リズムが「般若心経(はんにゃしんぎょう)」を彷彿とさせる。
「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時…… (かんじーざいぼさつ ぎょうじんはんにゃーはーらーみたじ……)」ってところ。
「般若心経」を聴いてみたい方はココをクリックしてください。(大体10秒頃、「チーン」の後。)わ~びっくりした、初音ミクまで唱えてる(笑)。→ 初音ミク 「般若心経」ポップ
ちなみに「般若心経」はWikipediaによれば、「僅か300字足らずの本文に大乗仏教の心髄が説かれている」教典で、端的に言えば、ありがたいお経なのだ。
それにゴダイゴファンとして無視できないのは、「現在最も流布しているのは玄奘三蔵訳とされる小本系の漢訳であり、『般若心経』といえばこれを指すことが多い」ということ。
「玄奘三蔵」とは、あの三蔵法師のこと。三蔵法師が天竺から持ち帰った経典の中に「般若心経」も含まれていた、という説もある。(異説あり)
タケ奮闘
話を元に戻そう。
『タケデモ05』の解説で、タケはDEAD ENDというコンセプトは「僕には、なかなか、なじめない」とか、タケの「幸せを表現するために音楽を作っていた」という「ポリシーに反する」(n. pag.)とか書いているし、『旧BOX』のブックレットでもDEAD ENDというテーマが「全くわかんなかった。何言ってんのかもわかんないし、何んか(ママ)暗いなーっていう感じだけで(笑)」(p.17)とか言っている。
このearly versionを聴くと、タケって本当に分かってなかったんだな、とつくづく思う。early versionにはタケのその分かんなさ加減と、だけど、プロの作曲家として、なんとかDEAD ENDというコンセプトに合わせようとする奮闘ぶりがうかがえる。
これでボツになった後、順番は前後するだろうけれど、曲と詞の練り直しがあり、トミー&Steve Schoenberg氏のLove, Flowers, Prophecyとの重ね合わせがあり、アレンジがあり、そして各楽器が加わってできた公式版が、名曲と名高いあのバージョン。
アルバムDEAD ENDを併せて聴いて、惚れ直したり、
やっぱゴダイゴ、最高!!
と、叫んだりする。
タケは解説で「『LOVE, FLOWERS, PROPHECY』に重なる形で作曲した」(n. pag.)と書いているので、そちらが先だったのかもしれない。
それにしても、どこからどこまでがDead Endで、どこからどこまでがLove, Flowers, Prophecyなんだろう。
これは解明されえぬ永遠の謎として残るのだろうか……。
【追記】↓この事実がついに解明された!
Under Underground
最後にUnder Undergroundについて。この曲のイントロって、すっげーカッコいいじゃん。だからミッキーがイントロを作ったんだと信じて疑わなかった。だけど実はタケデモの時点で、すでに例のイントロがある。つまりあのすっげーカッコいいイントロのアイディアはタケだったってこと。
タケ、ごめん。(と、ここでもプロデューサー気分で、態度がデカイ。)
それからこの曲では、ピアノは断然ミッキーの方がいいな、と思わせるタケのピアノも、えーっと……、味があって、好きだな。
ついでに、Under Undergroundがらみだけど、DEAD END収録曲にはあまり関係のない話。
前述のUnder Undergroundが終わって、「カッコいい~」と、じーんと余韻に浸りながら、何となく条件反射で A Face in the Crowdのあの♪ジャージャージャジャージャジャジャァァァン ビヨ~~ン……っていうヘビーなイントロが来そうな錯覚に心地よく陥っていると、なんとWhat Did You Do for Tomorrowが軽快に始まる。
正直ズッコケる。いくらデモ集とはいえ、曲順考えて欲しかったな。
The Last Hour
The Last Hourについて一言。
『タケデモ』8枚聴いて、「タケでも!?」と、びっくりしたのはこの曲だけ。(突然ダジャレを連発する筆者を、どうかお許しください。)
多くは語るまい。とにかく「おおっ……!」って感じ。もちろん、公式版の完成度とは比べようもない。
それは……、
……タケが無名時代の若かりし頃、FM大阪のおエライさんに言ってしまった尊大な一言を借りよう。
「聞いてくれりゃわかります」(『旧BOX』 p.15)
コメント
Tiaraさん
過去のページのコメントに返信いただいた上に、カスケーズのお時間まで取らせてしまって申し訳なかったです(>_<)
まさに、出だしだけです。(初めからそう書けばよかったです・・・)
あとは、もう、タケ・タケ・タケのメロディーですものね、『Morning』は。
『Images』は、Tiaraさんにはとても思い入れの深い曲だったのですね。
私は当時、弟と手分けしてアルバムを買っていて、デッドエンドは弟の所有でしたから、あまり存分に聴けませんでした。
しかも我が家はカセットで買っていたためか、ライナーに対訳が載っていなくて、中学生の私には歌詞の意味がイマイチわかっていませんでした。
ラストアワーと合わせて、あまりに美しいこれら2曲が大好きでしたが、『Images』の歌詞の深刻さは、大人になってからCDのデッドエンドを買ったとき、初めて気がついた次第です。
でも、そう、おっしゃるとおりどんな解釈もOKですよね。
そうとわかっていながら、これだけ考え込める自分って・・・(笑)
SECRET: 0
コメントありがとうございます。
“Morning”、私も好きです。いい曲ですよね。
青空さんがおっしゃってるのは、Cascadeのやつでいいんでしょうか。
そう言われて、どちらも数回聴き比べ、歌い比べ/(^^;)をしてみましたが、似てますかねぇ~?
う~ん、歌い出しのところ……?
少なくとも、私の耳ではさほど似てるとは思えないです。
「“The Last Hour”24歳以降生存説(笑)」は、私自身が24歳を大幅に突破して、タケの年齢と重ねた24歳の若者が生命を落とすという考えに忍びなかっただけです。厳密に言えば、"When I was 24"と、過去形で語っているので、主人公は25歳以上でしょうね。
それに加えて、中学生の頃、A面の“The Last Hour”で死んじゃったのに、B面で生き返ってる、と単純に思ったという記憶も絡んでます。
青空さんの「"Images"三途の川吸収説(笑)」も独自の、それこそ<イメージ>で面白いと思いますよ。
"The Moment of Truth"の歌詞の最後の二行で、「生死を選ぶことはできない」と言っているので、まぁ、どういう解釈でもいいんですよ。
正解なんてないので。
Tiaraさん、こんばんは。
たびたびお邪魔します。青空です。
ちょうど31年前の今日(9/2)初めてゴダイゴのコンサートに行ったことを思い出し、やってきてしまいました。
今朝、ちょうどこのタケデモ5巻の『DEAD END』以降を聴いていたのでかなり前ながらここに来ましたが大丈夫だったでしょうか?
『Images』がデモでは24歳で途切れているけれど公式盤では生き続けているというお話ですが、きっとタケが解説で書いている『Moment of the Truth』がなかったことになってしまった話とリンクしているのかもと思いました。
24歳で途切れたパターンでは、三途の川の手前の『Moment of the Truth』が必要だった。
でも、公式盤では『Moment of the Truth』がなくなることになったので、『Images』の中に三途の川を作ったのではないでしょうか?
「人は死ぬ間際に人生の走馬灯が見えるっていうけど・・・じゃ、僕は今死にかけているのか?」という部分です。
違うかなあ?
ところで全然別の話ですが、『The Last Hour』もあのように書かれていましたが、『Morning』もなんだかかの『リズ○・オブ・ザ・レ○ン』に似てませんか?
『Morning』、すごーく大好きな曲ですが。
コメントありがとうございます。
私も、INTERMISSION, MAGIC CAPSULE, 公式版(アルバム)と聴いてみて、INTERMISSIONが一番しっくりきます。
INTERMISSIONを聴いた後で、公式版を聴くと、軽く聞こえます。
INTERMISSIONの時、タケは30歳を過ぎていました。
やはり"Dead End"は人生経験も関係するのかな~、なんて思ったりします。
アルバムの"MIKUNI"が、今でも感動できるのは、ミッキーの曲だからでしょう。(笑)
"Dead End"のテーマは閉塞で、一方"MIKUNI"のテーマは解放です。
24歳のタケには、"MIKUNI"の方が理解しやすかったのかなとも思います。
今後、タケはどんな"Dead End"を歌うのでしょうか。
それも楽しみですね。
初めて音楽に感動して泣いたのが、このアルバムでしたけども。
旧BOXでのタケとミッキーの対談を読んで、成長するにつれて
"Dead End"のヴォーカルに物足りなさを感じてた訳が分かったなぁ…、
で、『タケデモ05』の解説で、それが、もっと補強された。(笑)
タケの持ち味とは違うものですからねぇ。
ヴォーカルは後のライヴの方のがいいと思います。
(でも"MIKUNI"は今でも、そのまま感動できるのは何故だろ。)
ABCDE気持さん
コメントありがとうございます。
なるほど、歌詞からそういう見分け方ができるわけですね。
自分は、もしかすると、もはや明確に分離できないほど、この二曲が融合しているのかな、とも思ったりしていました。
公式に言及されればスッキリするのですけどね。
もう、謎として残しておいてもいいかなとも思います。
こうやっていろんな見解で盛り上がれるし。(笑)
公式にはどこまでがその境目かという記述は
されたことはありませんが、歌詞を読めば
◎"Like a~"から "~were no more"までが
「Love Flowers Prophecy」
◎"Open up ~"から "~ dead end"までが
「Dead End」
と判断して間違いないと思います。