以前、当ブログで“Casa Blanca Lady"について扱ったことがある。
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キャンペーンソング
もともと、“Casa Blanca Lady”は、カネボウ化粧品のキャンペーンソング用に書かれた曲だった。
ところが、急遽“Casa Blanca Lady”はミッキー作曲の「君は薔薇より美しい」に差し替えられることになる。
この時の逸話は、アルバムLYENAのライナーノーツにタケの筆で書かれている。
“Casa Blanca Lady"のイメージは?
“Casa Blanca Lady"というフレーズが、カネボウ側から発案されたものかは不明だが、この歌詞は誰をイメージして書かれたのかが分かった。
それは、映画『カサブランカ』(Casablanca, 1942)で知られるハンフリー・ボガート(Humphrey Bogart,1899-1957)の元妻のローレン・バコール(Lauren Bacall, 1924-)だ。
以下、The Student Times(1980.7.11, p.16)に掲載されているタケと奈良橋氏のコラムから引用する。
(このコラムは、タケと奈良橋氏の二人の会話で進む。)
Take: “Casa Blanca Lady" は Hamphrey Boggart(ママ)の奥さんを思い浮べて作ったんでしょ。
Yoko: そうよ。Lauren Bacallという人なんだけど、たまたま彼女が最近出した自叙伝を読んだのね。彼との出逢いから、年の差をどうやつて克服し、結婚にまでこぎつけたか、ともかく、とてもドラマティックな人生を歩んでるの。ちょうどあの本を読み終ったあと、この曲をLPに入れるって聞いて、最後のverseを書き足したのよ。(「Take and Yoko Chattin' About Music No.75」)
奈良橋氏の言う「最後のverse」とは、♪I couldn't recognize that little girl...♪から始まるバースのことだろう。
このコラムが掲載された時期(1980.7.11)と、奈良橋氏が「彼女(Lauren Bacall)が最近出した自叙伝」と言っていることから、奈良橋氏が読んだのは1978年12月12日に出版されたLuren Bacall著By Myself(ISBN 978-0224016926, 邦題『私一人』山田宏一訳、文藝春秋、1985)だと思う。(原書発売日はAmazon.comによる。閲覧日2012/06/13)
ちなみにタケは、1980年7月10日発売のアルバムLYENAのライナーノーツで、“Casa Blanca Lady”を「おととしの冬に書いた曲」としている。1980年から見て「おととし」とは、1978年を指す。
タケの発言を拠り所にすれば、Amazonが存在しない時代に日本に住んでいた奈良橋氏が、なんらかの方法でBy Myselfを発売後間もなく入手し、読んで詞を書き、タケが作曲をする、という早業が1978年12月の後半二週間ほどの間にあったということになる。
まぁ、そんな推理はどうでもいい。
結局のところ“Casa Blanca Lady”のイメージがハンフリー・ボガートの元妻からきているのであれば、直接的ではないにせよ、この曲は映画『カサブランカ』とつながっていたのだ。
じゃ、やっぱり「カサブランカ」って、“Casa Blanca”じゃなくて“Casablanca”じゃん(^_^;)
って思う今日この頃。
すごーくお時間がある方は当ブログ記事→「『カサブランカ』ってどこですか?」をどうぞ。
コメント欄もお見逃しなく。(^_-)
コメント
ABCDE気持さん
コメントありがとうございます。
『ミュージックエッセイ・レナ』の情報は助かります。(まだ見つかっていない……orz)
「カサブランカ・レディ」というキャッチコピーがカネボウ側からの依頼として、最初にあったのだとすれば、普通に考えて映画『カサブランカ』が共通イメージとして提示されただろうと思います。
となれば、「カサブランカ・レディ」のイメージは、映画のヒロインのイングリッド・バーグマンとするのが妥当でしょう。なので、奈良橋氏がバコールをイメージして、という逸話は意外でした。
奈良橋氏は同コラムの終盤で、「彼女(バコール)の売り出され方が、私の想像していたのとビッタリ同じだった」と言っています。だからバコールの自叙伝を全部読んでからCM用の“Casa Blanca Lady”の詞を書いたのではないと思います。そもそも全部読まなくても、目次や拾い読みでも詞は書けるでしょうし、時間的制約から全部読んでから作詞に取りかかったのでは間に合わないだろうとも思います。
流れを整理すれば、
カネボウから依頼→“Casa Blanca Lady”(CM用)完成→By Myself読了→アルバム収録決定→最後のバース追加
ということでしょう。
細かい時期的なことはもう特定不可能ですね。
まず素朴な疑問として、奈良橋氏の発言の「彼女が最近出した自叙伝」の、「最近」っていつなんだって思います。(笑)このコラムが掲載されたThe Student Timesが7月発売です。私が調べた範囲では、奈良橋氏が指しているのはBy Myselfだと思いますが、前年の12月発売を「最近出した」って言うのか、とか……。
つぎにタケの「おととしの冬(1978年冬)」発言が信頼できるのか疑問です。バコールのBy Myselfが1978年12月12日発売なので、1978年は残るところ二週間ほどしかありません。実は「去年の冬(1979年初頭)」が正しいのではないか、とか。
まぁ、そこを疑問視していてはミもフタもないのですが……。/(^^;)
貴重な情報ありがとうございます! 実在のモデルがあったわけですね。
この会話の内容から如何様にでも解釈はできるのですが、読了してから
LP収録が決定した、とあるので “初期段階の作詞作業時(カネボウCM用、
1978年末時点)ではなく、アルバム「Lyena」の企画(「ミュージック
エッセイ・レナ」に記載されている情報では、昭和54年秋にアルバムの
発案がなされたとある)段階の1979年末~1980年初頭あたりに読了した”
とも推理できます。
ここからは私の妄想(笑)。
カネボウCMの企画・制作時には最後の「I couldn’t~」からのバースを
除く歌詞が作られた。それはあくまでも映画「カサブランカ」をイメージ
して。それがソロアルバム収録・制作時に(選曲された時点ではなく)、
1コーラスの繰り返しだけでは不十分、最後に余韻を持たせるためにAメロを
加えたい→追加で詞を書いてくれないか?とのプロデューサー命令。
詞の中のヒロインの人物像に深みを持たせるため、当時読んでいた
バコール氏の自伝からその要素を盛り込んだ………と思った次第。
http://www.geocities.jp/h2o_classic/l-bacall.html
映画「脱出」(1944年)でのエピソードを見るにつけ、大スターとの初共演
で緊張する少女が、大スターのリードによって自身もスターの仲間入りを
果たす…という内容が、追加された4行のバースに凝縮されているような
気がします。
また「Student Times」ネタ期待してます(^ー゚)ノ!