“Mikuni”と“Buddha’s Song”
名盤DEAD ENDの中で、一、二を争うほどの名曲でありながら、“Mikuni”は不遇の名曲である。“Mikuni”が不憫でならない(涙)。
題名
“Mikuni”の題名についての逸話は結構知られていると思うけど、念のためにまとめておこう。
“Mikuni”の邦題は「御国」である。しかし元々は地名で、北陸地方の「三国」からきている。北陸地方の三国というと、東尋坊とかあのあたりかな。だとすれば、岸壁に荒波がバッシャーンって激しく打ち付ける、という歌詞はぴったりだ。
奈良橋氏が作詞した時には、タイトルも当然ローマ字で書かれていた。タケ曰く、「ジョニーが『陽子がこんな日本語を知っているとは思わなかった』なんて喜んで御国という字にかえた」。レコードができてから奈良橋氏が「漢字が違う」と指摘する。それに対するジョニーさんの言い訳は「あれはちょうど設定もあっていて、三国(筆者注:文脈からおそらく「御国」の誤植)にもがけや海があって……」。(『Walk On 33号』n. pag.)
というわけで“Mikuni”の邦題は「三国」から「御国」になった。
Let your heart fly
筆者は、♪Let your heart fly…♪あたりから、世俗に捕らわれた魂を(神の)御国へ解き放とう、という意味だと思って聴いていた。だから邦題が「御国」でも全然おかしいとは思わなかったな。まぁ、「三国」より「御国」の方が曲名としては広がりがあっていいと思う。
ちなみに「御国」とは、『広辞苑』第6版電子版によれば、「1.国の尊敬語。2.日本国。皇国」という意味だ。だから「御国」は必ずしも「神の御国」とは限らない。DVD BOXの解説には「魂の救済」(p.13)とか書いてあるけど、『広辞苑』第一義の「国の尊敬語」を採って広義的に解釈すれば、宗教的なことはうっちゃって、たとえば故郷で自然を眺めながら心を解き放て!、的なイメージでもいいんじゃないだろうか。
全曲演奏されない?
さて、そんな背景をもつ“Mikuni”だが、この曲は本来、独立した一曲であるにもかかわらず、筆者が知る限りでは、曲がフルで演奏されることはほとんどなく、サビのメロディが「組曲 新創世紀」のエンディングとして使われるだけである。2011年11月19日(土)開催の「ゴダイゴ35周年コンサート at シブコー」(←勝手に命名)でも、間違いなくそうだった。しかし、以前、当ブログで取り上げた「ファンが選んだベスト20コンサート」では、“Mikuni”が単独で演奏されている。曲順は“Thank You Baby”、“Mikuni”、“Lonliness”だったので、おそらく“Mikuni”は全曲演奏されたものと推測される。
一方で、当ブログ記事“A child is born”の回でも書いたが、“Mikuni”が“Buddha’s Song”のエンディングで使われているせいで、アルバム『新創世紀』に収録されている“Buddha’s Song”の言語を超越した美しいエンディングがライブで演奏されたことはないんじゃないかな。あまりに昔のことで記憶がはっきりしないが、セレブレーションツアーで「組曲 新創世紀」が演奏され、その時も“Buddha’s Song”のエンディングは“Mikuni”だったような気がする。(間違ってたらご指摘ください。また、二曲ともライブで完全版、つまり“Mikuni”と“Buddha’s Song”が独立していて、“Buddha‘s Song”のエンディングがアルバムと同等のバージョンを聴いたことがあるぞー、という方はおしえてください)
とにかくMAGIC CAPSULE(1979)で、すでに“Buddha’s Song”のエンディングは“Mikuni”のサビ、という構成になっているから、ゴダイゴ(ミッキー)の中では、結構早い時期から“Buddha’s Song”と“Mikuni”は、一曲扱いなのかもしれない。となると、このまま、“Mikuni”の完全版を聴く機会は一生ないのだろうか……。
『DVD BOX』
と、思っていた矢先に勃発した2011年11月16日(水)の『DVD BOX』発売騒動。いや、<騒動>じゃないか(笑)。あ、<騒動>になった方がいいのか……(悩)。
“Mikuni”と“Buddha’s Song”に注目すると、Disc 4 『ゴダイゴ in 東大寺』(2006)で両曲ともに、Disc 5『GODIEGO 2007 TOKYO新創世紀』で“Buddha’s Song”が、そしてDisc 6『GODIEGO 2008 TOKYO新創世紀 第二章 R+EVOLUTION』で、“Mikuni”が演奏されている。
Disc 4 『ゴダイゴ in 東大寺』
Disc 4 『ゴダイゴ in 東大寺』を観る前に、解説の曲目リストやメニューで確認すると、「MIKUNI~BUDDHA'S SONG~MIKUNI」となっている。
おっ、“Mikuni”が“Buddha’s Song”の<前>に置かれている! ということは、“Mikuni”を完全版で聴くことができるかもしれない!
期待でいっぱい。
ワクワク。o(^-^)o
♪Standing by the sea♪
タケじゃないっっっ!!! (#`Д´)ノノ┻┻;
つーかさー、ゴダイゴのライブでゴダイゴの曲をゴダイゴじゃない人のソロで始めてどーすんのさっ!!! じゃ、たとえばさー、”Dead End ~Love, Flowers, Prophecy”のイントロが、ミッキーじゃなくていいのか、っつーの!
いかん、取り乱してしまった……。
(ヘ・_・)ヘ ┳━┳
我慢して……、じゃないや、落ち着いて聴いてみる-。
♪Looking out into forever♪
上手いな~、竹越さん。ともすると今のタケよりずっと上手いかも。
ごめん、それでも……、タケじゃなきゃイヤなんだ。
まぁ、竹越さんにソロを歌わせてあげようという気持ち(親心?)からなんだろうな。それは理解できる。
竹越さんがいるおかげでタケはボーカルに専念することができる。竹越さんだからこそ成立するタケとの美しいハーモニーは、本当に素晴らしい。本心からそう思う。
だけどなぁ……。タケじゃなきゃイヤだ。
結局、Disc 4『ゴダイゴ in 東大寺』の“Mikuni”は、竹越さんのソロから始まり、タケの“Buddha’s Song”へ移行し、そしてタケによる“Mikuni”のサビへ戻ってくる。つまりタケは“Mikuni”では、ぶっちゃけ(Repeat *)部分しか歌っていない。
Disc 5『GODIEGO 2007 TOKYO新創世紀』
Disc 5『GODIEGO 2007 TOKYO新創世紀』では、“Mikuni”は演奏されていない。一方、「組曲 新創世紀」の流れで、“Buddha’s Song”のエンディングはいつものように“Mikuni”のサビかと思ったら、『ゴダイゴ in 東大寺』で、竹越さんの“Mikuni”とタケの“Buddha’s Song”のブリッジで使われたフレーズのアレンジだった。和太鼓、琴、尺八などの和楽器が加わり、まるで一斉に散り始めた桜吹雪の中で、花びらを全身で浴びているような美しいエンディングだ。これはこれでいいんだけど……。
Disc 6『GODIEGO 2008 TOKYO新創世紀 第二章 R+EVOLUTION』
Disc 6『GODIEGO 2008 TOKYO新創世紀 第二章 R+EVOLUTION』の“Mikuni”に期待する。
♪Standing by the sea♪……。
タケじゃないっっっ!!! (#`Д´)ノノ┻┻;
竹越さんでもない。女性ソロだ……。
でも……、まぁ……、えーっと、無理矢理自分を納得させると、あの-、これは、ゴダイゴのライブとはいえ、クワイアや小芝居でショーアップされていて、純粋なゴダイゴのライブとはいえないし、ステージも広くて、全体的な構成がインパクト勝負みたいなところもあるし、アイディアとしては、へぇ~なるほどね~、と、水を張った洗面器に顔をつけて60秒間息を止めて、すっごくがんばれば思わないでもない。それでも、どーーーしてもタケが歌わない理由を見つけられないけど……。
ああ、やっぱり“Mikuni”を完全な形では、一生聴くことはできないのかな。
“Buddha’s Song”も。
“Mikuni” ≈ “Buddha‘s Song”?
“Mikuni”と“Buddha‘s Song”は、筆者の中では相反する曲だ。音楽的にではなく、内容的に。
“Mikuni”は、窮屈で煩わしい俗世間から逃れた人間が、崖に一人佇み、開けた視界と断崖にとめどなく打ち付ける波に、身体と精神の緊張が緩み、魂が解放されるイメージ。
一方 “Buddha’s Song”は、人智を越えた実態のない思想的な何か、たとえばタイトルに“Buddha”を入れているくらいだから、悟りみたいなものを感じる。特にアルバム版のエンディングは、人間の骨肉の争いの後に広がる悔恨と沈黙と赦しと癒やし、それらすべてを抱きながら、風に煽られ、ゆっくり空中を舞いあがっていく羽衣をイメージさせる。そこに人間の姿はない。
“Mikuni”は不憫な曲だ。時にサビが“Buddha’s Song”のエンディングになるだけで歌われることもなく、まれに、歌われた、やった!と思ったらボーカリストはタケじゃない。部分的にならタケも歌ってるけど、全部タケじゃなきゃイヤだ。ゴダイゴを聴きたいのだから。
“Mikuni”と“Buddha’s Song”は、音楽的には繋がるのだろう。しかしながら、それぞれが別のアルバムに収録されていることや、それぞれに別個のイメージがある筆者には、どうしても、何度聴いても、いつ聴いても“Buddha’s Song”と“Mikuni”が繋がっていることに違和感を持ってしまうのである。
“Mikuni”は“Mikuni”単独で、そして“Buddha’s Song”はアルバム版のエンディングで演奏してほしい。いつか。
【追記 2017/11/20】
2017/11/19 中野サンプラザで行われたゴダイゴのコンサートにおいて、”Mikuni”がフルで演奏され、タケが全曲歌いました。
なんと¥35,000→¥25,663!!!
(2012年1月12日1時12分12秒現在)
コメント
すいません、連投します
私はやはり御国の1番のアレンジはオリジナルのスタジオレコーディング版だと思います
ストリングスのアレンジと終盤で登場するシンセのソロの美しさ、
そして何よりもサビが7回続けて演奏されるあの構成、
あのいつまでも続きそうな構成がこの曲のアレンジで最も重要な部分なのだと思ってます
(The Great Sea Flowsもこれに似た構成でしたが御国を意識したのではないかという気がします
The Gateway To The Dragon / New BeatもThe Birth Of The Odyssey / Monkey Magicを
意識して作ったとMickieが言ってましたし)
東大寺でも先日の中野でもサビの部分は数回で終わったのですが
私が東大寺の演奏を好むのはその後に浅野さんのギターソロが続くことで
いつまでも続きそうな構成に近くなっていたからではないかと思います
ところで。。
このスタジオ版のサビの部分、
歌っているのはタケではなくてTommyだと今更ながら気づきました。。
みなさん、ご存知でしたか??
yossieさん
コメントありがとうございます。
>歌っているのはタケではなくてTommyだと今更ながら気づきました。。
えっ!? そうなんですか!?
声と発音の特徴から、ずっとタケだと信じていました。
私の耳もまだまだですな……orz
>yossieさん、トラまるさん
コメントありがとうございます。
”MIKUNI”も色々なアレンジがありますよね。
ひとそれぞれに好きなバージョンが分かれるかもしれません。
録音媒体や録画媒体を比較しながら、自分好みの”MIKUNI”を見つけるのもゴダイゴの楽しみ方の一つですね。
嬉しくて思わずコメント失礼します。
私も東大寺ライブのミクニ~佛陀の歌~ミクニが大好きで何度も再生して観ております。私はゴダイゴファン復活したのが去年の暮れなので勿論東大寺ライブには行けてませんが、このライブに行きたかったなあと思っております。
ゴダイゴはライブでヒット曲の例の四曲は必ずやるようですが、私もファンとしては四曲やらなくてもいいから、隠れた名曲を演奏して欲しいと切に思います。
竹越くんのミクニもいいと思います。間奏のホーンズも素晴らしかったです。
御国、中学生の頃から好きになって
洋楽だとか色々聴き始めても本当に今でも一番好きな曲です
1985年の解散の時は地方にいた高校生だったのでライブに行くことも出来ず
1999年の期間限定再結成の時はやっとゴダイゴのライブを観れるとワクワクしたものです
しかし。。
あの時のライブは新曲をフル演奏、昔の曲を短くメドレーで演奏するという
正直、今まで観たライブで一番がっかりしたと言っても過言ではありません
その影響もあって2006年東大寺の再始動ライブには行きませんでした
それが今となっては非常に悔やまれます
東大寺のライブがDVDになってパッケージのセットリストに御国が記載されて知っていても
実際にDVDを観たら背筋が震える感動的な演奏でした
もしあの演奏を事前にセットリストを知らずに聴いてたとしたら
まともには聴いていられなかったと思います
今年の中野のライブは非常に評判がよかったようですが
正直自分にはもっとすごい東大寺のような御国が演奏できたはずだと思っています
もっというとGandharaもMonkey MagicもBeautiful Nameも999も
なくてもいいから御国をライブの最後に豪華にやってほしいなと。。
多分ゴダイゴは御国のすごさを知らないんだと思います
あのDVDを観ててでさえも背筋が震えた演奏をいつか体験したいと思います
>“Mikuni”は“Mikuni”単独で
昨日、中野サンプラザで、
Mikuni~Buddha’s Song~Mikuniでもなければ、
竹越さんのヴォーカルでもなければ、
クワイヤの女性でもなく、
Mikuni完全版を聴いた者です。
アルバムDEAD ENDを通しで聴くという、稀有な経験が出来ました。
それにしてもすごいコンサート、行って良かったと心から思っています。
江戸門さん
コメントありがとうございます。
江戸門さんも、昨日(2017/11/19)の中野サンプラザにいらしたのですね。
満足度が高いコンサートになって良かった!!
正真正銘のゴダイゴの”Mikuni”でした。
ついにゴダイゴの生演奏で、タケの声で、”Mikuni”をフルで聴くことができました!
私がこのエントリー記事を書いてから、もうすぐ5年経とうとしています……。
本当に、本当にうれしかった……。