「MORエッセイ」を探して その4-Magic Capsule編-
ここまでおつきあいいただき、ありがとうございます。
経緯を振り返りたい方は、下をクリックしてください。
・「MORエッセイ」を探して その1―Prelude編―
・「MORエッセイ」を探して その2-Gateway to the Dragon編-
・「MORエッセイ」を探して その3-Deep Red編-
確認完了
国会議員でも国会記者クラブの人間でもないのに、永田町に2日も通って、確認作業は終わった。
状況は惨憺たるものだった。
「その3-Deep Red編-」で記述した回以外は、全部切り取られていた。
被害は44冊-。
奇跡的に残っているものは、コピーを取ってきた。
国会図書館でのコピーの方法
コピーの方法について少し述べておこう。
コピーもPCで申し込むことになっている。PC上では、「複写物の使用目的」という欄がある。デフォルトで「調査研究の用に供するため」になっている。
日本語で書かれているのに、よく意味がわからないが、とにかく何か聞かれたら、「80年代前半のポピュラーミュージックについて研究しているので」とでも答えようと、心の準備をしていた。(おちゃらけたタケの似顔絵のイラストが、激しく信憑性を薄くするが……)
申込書を印刷して、コピー開始と終了ページを記入し、所定のしおりを挟んだ原本とともに受付に提出する。
何も聞かれなかった。
有料です
コピーを受け取るときに、代金を支払うシステムのようだ。一枚あたりのコピー代金は以下の通り。
コンビニなんかに比べれば、ビックリするほど高い。でも自分でやらなくていいのは楽だ。
前述したように雑誌は数冊を束ねて製本してある。だからちょっと重い。これをいちいち「エイッ!」とひっくり返して、位置を合わせ、コピー機のボタンを押す。厚みでフタが閉まらないから、下から光がピカッ! 「おぅっ……」とか言いつつ、まぶしさに耐え、またコピーしたいページを探して、「よいしょっ!」とひっくり返して…、なんて、かなりの重労働なのだ。
「MORエッセイ」が掲載された見開き2ページを、B4用紙1枚でコピーしてもらったので、1枚あたり25.2円。
1、2枚なら小数点以下は切り捨てされるようだ。多分5枚で126円とかそんな感じなのかな。自分は何回かに分けてコピーしたので少し誤差が出るが、17枚コピーして合計427円だった。
17枚(=17回分)。これだけしかコピーを取るべきものはなかった。『タッタ君現わる』に収録されていないエピソードは、全部で61回あるというのに。
せめてもの救いはあった
無理矢理救いを見つけるとすれば、連載「その95~アンコール」までが通して全部残っていたこと。ここには、ジョニー野村氏と出会う前に、タケが数々のレコード会社のディレクターを怒らせた話とか(その98)、タケがジョニー野村氏から「おっさん」と呼ばれた話なんかが(その100)、続き物になって語られている。この一連の流れが最後まで通して残っている。垂涎のエピソードの数々だ。
これらのページは、もしかしたら自分を待っていてくれたのかもしれないとすら思えた。諦めずに最後まで確認して良かった。
なぜ切り取り行為者はこの一連の回を残したのだろうか。この時期(1985年)の彼/彼女は、他に熱中するものを見つけたのだろうか。
願わくば、逮捕されていて欲しい。切り取ったページも返して欲しい。責められるべきは、当然切り取り行為者である。(「犯人」と呼びたいくらいだ)
だが一方で、44冊もの「MORエッセイ」の切り取りを看過した国会図書館の管理体制にも責任はある。職務怠慢だ。
投書してやる!
トイレから席に戻る間、そんなことを沸々考えつつ、ブツブツ言いながら、鬱々と歩いていたら、おっ、ちょうどいいところに、投書箱が!!
ガッツリ書いた。ちょっとは気が晴れた、……ような気がした。でも、もう元には戻らない。
図書館は現世に生きる人の利益のためだけにあるのではない。所蔵された本は、後世に残すべき「財産」なのだ(国立国会図書館)。
後の世に生まれた人は、図書館に蓄積された書籍から過去を学び、未来を作り出す。我々が書籍から歴史を学ぶように、未来の人間は、いつか過去化した我々を書籍から学ぶ。未来へ伝えるべき財産に、何人たりとも瑕疵を作ってはならない。
なぜならば図書館は、
人間の歴史と文化と叡智が詰まったマジック・カプセルなのだから。
長いテーマにもかかわらず、読んでいただいて本当にありがとうございました。
【2011年8月1日追記】
すごーくお時間のある方は、下をクリックして、番外編「その4′-A Hundred Years from Now編-」もどうぞ。
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