前回の「"Salad Girl"-その1ー」では、あれでも『タケデモ02』収録の"Salad Girl"をテーマにしようと思って書き始めたものである。しかし、シングルバージョンのタケのラブリーさに興奮するあまり、本題に行き着く前に終わらざるをえなくなってしまった。
よって、今回も"Salad Girl"をテーマに、まず作曲依頼の経緯を抑え、その後で『タケデモ02』を、極力冷静に論じたい。
1976年夏キャンペーン
”Salad Girl”は、カネボウ化粧品の1976年夏キャンペーンのCMソングである。モデルはレジナ・コニーゴが務めた。
余談ながら、ミッキーが作曲・編曲した「君は薔薇より美しい」(作詞:門谷憲二、歌唱:布施明、1979年1月17日発売)は、同カネボウ化粧品の1979年春キャンペーンのCMソングである。
なぜ<薔薇>より美しいのか、については、ココの記事が興味深い。(「化粧品キャンペーン年表」『EMIT - 昭和30年代生まれに贈るオンラインマガジン』、2011/09/25閲覧)
話を元に戻そう。
ゴダイゴファンには既知の情報かもしれないが、1976年カネボウ夏キャンペーンのCMソングを作るにあたり、タケは3人目の候補であった。
その時の経緯を、TBSラジオの「朝丘聡のザ・ヒットパレード」で、タケ自らが語っている。
本稿の核となる重要な言及なので、書き起こしてみよう。
タケ(事務所にCM担当者から電話が掛かってきて、相手曰く)「……タケカワさん、あのー、今度、そのー、大っきなやつがあるんだけれども。実は3人目の候補でタケカワさんの名前が挙がっているから。
…(中略)…
以下すべてタケ 「でも間違いなくタケカワさんに決まると思う」っていう電話ですよ。
「何ですかそれ」って言ったら、
「まず1人目の候補がポール・マッカートニーで、2人目がエルトン・ジョンだから、2人ともどうせやらないから、だから間違いなくタケカワさんなるよ」って……。
(YouTube「ゴダイゴ再結成SP Part 3」 *アップ主さま、ありがとうございます。)
同番組「Part 2」で、タケが「あさって誕生日……今度で47(歳)になります」と言っていることから、1999/10/20 O.A.と推定。)
ついでに、同番組「Part3」で「『新創世紀』から……」と言って"Salad Girl"が掛かる。 だが、実際に掛かるのはシングルバージョンである。 ラジオ局のスタッフは、アルバムとシングルでアレンジが違うことは知らないのだろう。
やはり、筆者がかつて経験したように、未だにラジオで掛かるのは、シングルバージョンなのである。
ライバル心?
さて、タケは"Salad Girl”を作曲するにあたり、この依頼時の話からポール・マッカートニーやエルトン・ジョンを、少なからず意識したのではないだろうか。
この推測には『キタキツネ物語 ALTERNATE SOUNDTRACKS+タケカワユキヒデ/HOME RECORDING DEMO IN 1978』の解説が手がかりになる。
『キタキツネ物語』(映画)のラッシュ時には、歌が入る場面に各キャラクターに合わせたイメージソングが入っていた。たとえばタケが歌う場面にはビートルズ、町田義人氏が歌う場面にはボブ・ディランである。
それでタケは、「いざ曲を作るときにビートルズやボブディラン(ママ)より、いい曲を作らなければ、と悩んだ」と、書いている。(5.“A Warm Wind’s Blowing”)
だから『キタキツネ物語』から約二年前の”Salad Girl”でも同様に、タケはポール・マッカートニーやエルトン・ジョンより、「いい曲を作らなければ」と、「悩んだ」かどうかはともかくとして、考えたのではないかと推測する。
それに、「(ポール・マッカートニーとエルトン・ジョンは)2人ともどうせやらないから」と言われて慢心し、彼らと比肩できない曲で妥協する作曲家・タケカワユキヒデではないはずである。
コメント
ABCDE気持さん
コメント&情報ありがとうございます!
「化粧品キャンペーン年表」を楽しんで頂けたようで、嬉しいです。
私も楽しみました。
"Casa Blanca Lady"が、春キャンペーンの曲というのは、ちょっとしっとりしすぎの感があります。
秋キャンペーンなら、ピッタリだと思いますが……。
春らしく、アップテンポな曲にアレンジされる予定だったのでしょうか。
それも聴いてみたかったような気がします。
「君は薔薇より美しい」は、当時、あまり好きな曲ではありませんでした。
なんか大ゲサな感じがして。
ですが、最近、YouTubeで聴いたら、なんか、いいんですよ。感動してしまいました。
特に、♪走るほどに……♪以降、好きです。
今は、なんていい曲なんだろうと思います。さすがミッキーですね。
私は、春キャンペーンの曲は「君は薔薇より美しい」で、良かったんじゃないかと思います。
この曲は、ミッチーやASKAも歌ってますね。
聴き比べたところ、やはり布施明版が、特に彼のファンというわけではありませんが、一番心にグッと来ます。
引用頂いた「化粧品キャンペーン年表 」、興味
深く拝見させて頂きました。改めて見ると当時
のキャンペーンソングに、ゴダイゴ関連の楽曲
が数々関わっているのが再確認できます。
◎79年春 カネボウ「君は薔薇より美しい」
…前年78年末時点では、タケカワさん作曲の
「Casa Blanca Lady」を採用で9割方進行して
いたが、急遽プロダクションからストップ命令
(「Lyena」ライナーノーツより)。ミッキー
さん作曲の「君は~」が発売した79年1月17日
の2週後の2月1日に「カサブランカ・ダンディ」
(沢田研二)が発売されたのは有名な話。
◎79年秋・冬 コーセー「エスプリーク」
…トランザム演奏だが、奈良橋陽子さん作詞
&タケカワさん作曲の黄金コンビ作品。
◎80年冬 資生堂「魅惑・シェイプアップ」
…こちらもタケ&ヨーコ黄金コンビの作品。
クールファイブがバンド演奏する異色作。
◎82年夏 コーセー「ドキドキ・サマーガール」
…説明不要。タケカワさんは「コーセーの春の
TVCFにはザ・タイガースが出演していたのに、
自分が映像に出ないのは意味深」と「CMソング
グラフィティ VOL.2」のライナーノーツに書か
れてましたね。
これら化粧品キャンペーンソング制作の起点が
「Salad Girl」だったと考えると、ゴダイゴに
とって同曲がいかにエポックメーキングなもの
だったかが伺えますね。