“Salad Girl”-その3-

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“Salad Girl”-その3-
『タケカワユキヒデ/ホームレコーディング・デモ ARCHIVE SERIES VOL. 2』

"Salad Girl"シリーズは、ゆる~く繋がっています。
すごーくお時間のある方は、↓からどうぞ。


図らずも前置きが長すぎた……。

なにゆえ、"Salad Girl"でこんなに長くなってしまうのか、という計画性の無さへの反省と自責の念は、どこかへうっちゃって、今度こそ『タケデモ02』に収録されている"Salad Girl"を聴こう。

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3つの"Salad Girl"

『タケデモ02』には、3曲の(3種類の、と言うべきか)"Salad Girl"が収録されている。
以下にリストアップしてみる。(数字はトラックナンバー)

2. ”Salad Girl”
3. ”Salad Girl”- Another version Type 1-
4. ”Salad Girl”- Another version Type 2-

どこが違うの?

第一に、トラックナンバー2の”Salad Girl”について述べる。

この”Salad Girl”は、公式版に近いバージョンである。ほぼ同じ、と言っていいだろう。
素人目、いや、素人耳には、どこが違うのか分からない。

確かにタケが解説で書いているように、歌詞は2番から始まっている。だから異質な感じがしないこともない。加えて、じっくり聴いたり、一緒に歌ったりすると、音や譜割りが若干違うことが分かる。

だが、ちょっと見、いや、ちょっと聴き、筆者には、さほど違いは聴き分けられない。つまり、それくらい公式版と近いということである。

筆者は、『タケデモ』では、公式版との乖離を楽しみたい。だから最初このバージョンを聴いたとき、「そのまんまじゃん」と感じ、落胆した。そして何故このバージョンが収録されたのか疑問を持った。この程度の相違であれば、公式版とほぼ同等であり、『タケデモ』収録は不相応と考える。

しかしながら、音楽的分析ができる方には、筆者が気付かない『タケデモ』収録相応の相違点を発見でき、それを楽しめるのかもしれない。

また、シンプルなピアノ演奏だけで純粋にメロディの原型を楽しみたい方、公式版と比較し、各楽器の視点から検証したい方も、収録は妥当と思われるだろう。

『タケデモ』シリーズに何を求め、何を楽しむかは、個々に異なる。
当然である。

Type 1

第二に、トラックナンバー3の ”Salad Girl”- Another version Type 1-(以下“Type 1”と略記)に焦点を当てよう。

筆者は公式版を含めて“Type 1”が一番好きだ。

同曲の解説によれば、「ミッキーに評判がよかった」とのこと。やはりミッキーのセンスは素敵。
ミッキーと感性が一致したかと思うと、なんだか、めちゃくちゃ嬉しい。

公式版は、年齢が20歳そこそこの恋愛という感じがする。一方、この“Type 1”は、公式版より少し大人っぽい雰囲気を醸し出す。

歌い出し♪She is my salad girl♪の、”is”にストレスが置かれているので、ほほえましい彼女自慢にも聞こえる。

デートの約束で、彼女と待ち合わせ。待っている間に、男子校時代の友達と久しぶりにバッタリ会ってしまう。なんとなく雑談していると、彼女が遠くから走ってくるのが見える。友達に、つい「彼女が僕の……」って、照れもせず、嬉しそうに自慢してるって感じ。

彼女が僕のサラダ・ガール、
めっちゃくちゃ可愛いんだ。
頬がピンクに紅潮して、
唇なんか、ぷるぷるで……。

なーんて感じで。

しかし、この「サラダ・ガール」っていうコピーは、カネボウが考えたのか広告会社が考えたのか知らないけど、カタカナにすると小っ恥ずかし過ぎる。

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昨晩……、多分8時頃かな、あまり遅くない時間に、東京タワーの展望室で、ちょっと誰もいない隙を見つけて、初めてチューとかして、彼女の唇の柔らかさに胸キュン。
で、すっごく嬉しくて、幸せな気持ちのまま、昨夜はバイバイ。

そして今日、また会える、あ、彼女が<僕の>所へ走ってくる、ほら、あそこ! ってワクワク弾む嬉しさ。

筆者は特に、二番の♪And the lips of strawberry red♪(←こう聞こえる)の、”strawberry”に沿うメロディが、彼の心臓バクバク感と、シャボン玉のような下ゴコロがちょびっと見えて、すごく、すごく好きだ。

この曲がボツか……。あー、もったいない。
カネボウ化粧品の対象年齢が、もうちょっと若かったのだろう。
資生堂なら、こっちを選んだかもしれない。

Type 2

最後にトラックナンバー4の ”Salad Girl”- Another version Type 2-(以下“Type 2”と略記)を聴こう。
歌詞は公式版と同じ。

メロディは、清々しく、さわやか。
で、……えーっと、なんて言ったらいいのかな(←これはタケの口グセね)、まるでアルコールを含ませた脱脂綿で消毒されたインフルエンザの予防接種直前の二の腕の一部分のように清潔な曲、と言えばイメージしやすいかもしれない。

以上。

うーん、この清々しさを、どう表現すべきか……。

まるで「手のひらに太陽を」を聞いたときに覚えた清々しさを彷彿とさせる、と言うべきか。(曲が似ているという意味ではなくて。)

歌詞は公式版と同じなんだけど、メロディがなんとなく客観的な印象を受ける。

この客観性は、♪You wake up …♪を、♪She wakes up ...♪に変更した方がいいんじゃないかと思うほどである。

うーん、タケは何と言っているのだろう。

ちょっと解説を読んでみよう。

「こちら(“Type 2”)の方が当時の僕らしい雰囲気がより出ている」と書いている。さらに、「それなりにいいところがあって、捨てがたい」とも。(n. pag.)

そうか……。

確かに「それなりにいいところ」はある。でも、化粧品のCMには合わない。カネボウ化粧品がこれをボツにしたのも理解できる。

筆者には、“Type 2”は、若すぎる、客観的すぎる、冷静すぎる、優等生過ぎる、少年が手の届かない年上の女性に抱く一方的な憧れを歌った片思いソングのように響く。

“Type 2”は、化粧品のCMで使うよりも、小学校で英語教育が始まったこともあり、むしろ小中高いずれかの学校の英語/音楽の教科書に掲載すべきだ。そして合唱コンクールの課題曲にしたらいいのではないだろうか。間違いなく教育的効果は高いだろう。

もしくは歌詞を変更して、アニメの主題歌……、原作を読んだこともないし、アニメを見たこともないのにタイトルを挙げるのもどうかと思うが、「けいおん!」なんてどうだろう。タイトルも"Salad Girl"から"K-On Girls!"に変えて。軽音部の彼女らの日常をポップに包括し、表現するメロディだと確信する。

結論

以上、今回は『タケデモ02』に収録された3種類の"Salad Girl"を主題に、極力冷静に論じた。当ブログ「"Salad Girl"-その1-」で会得した技術であるハートを飛ばすことを回避したのが、その証拠である。

"Salad Girl"のバリエーションは、ひとつのCMのために3種類の曲がクライアントに提示されていたことを我々に知らしめた。

3種類の"Salad Girl"は、なぜ公式版になった曲が「公式版」になりえたのか、また、なぜ他はボツになったのか等、聴く側のイメージをかきたてる。

こんなに語り倒しておいてなんだが、"Salad Girl"は、元々(シングルバージョンで心をわしづかみにされるまで)、ものすごく好きな曲というわけではなかった。ゴダイゴの曲で、もっともっと好きな曲は他にある。

けれども、こんなにも公式版一曲の背後にある様々なことを発見し、デモから色々なことを受け止め、想いを馳せずにはいられない。これは自分でも驚きだった。

"Salad Girl"のバリエーションで、今まで自分でも知らなかった自分の音楽の聴き方に気付く-。
だから『タケデモ』シリーズは面白い。

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